深まる軍事同盟、交代制で10万人規模派遣も

派兵だけでなく、かねて行われている兵器支援も継続している。フィナンシャル・タイムズは、北朝鮮がロシアに長距離ロケットと砲兵システムを供給していると報じている。ウクライナ情報機関によれば、北朝鮮は最近、国産の170mm M1989自走砲50門と、通常ロケットと誘導ロケットを発射できる240mm多連装ロケットシステム20基を供給したという。

ブルームバーグによると、北朝鮮とロシアの同盟関係はさらに深まる可能性がある。G20加盟国の一部による評価として、北朝鮮軍の派遣は単一の派遣ではなく、時間をかけて部隊を交代させる形で行われる可能性が高いという。

韓国の駐在ウクライナ大使のドミトロ・ポノマレンコ氏は今月初め、VOAとのインタビューで、「ロシアのクルスク地域、そして場合によっては東ウクライナの占領地域で戦うため、最大1万5000人の北朝鮮軍が数カ月ごとに交代する」との見方を示した。

一方、北朝鮮でも軍の態勢強化に向けた動きが本格化している。ロイターによると、金正恩氏は平壌で開かれた大隊長・政治指導員会議で演説を行い、「実際の戦争に対する能力の向上に、実質的かつ根本的な改善をもたらすため、全力を尽くすよう」呼びかけたという。

写真=iStock.com/Omer Serkan Bakir
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こうした関与の深化に対し、ウクライナのゼレンスキー大統領は強い警戒感を示している。ゼレンスキー氏は以前、「10月27日から28日にかけて、ロシアは最初の北朝鮮軍を戦闘地域に配備する予定だ」と指摘。カザンで開催されたBRICS首脳会議での「偽情報」と対比して、「これは明らかなロシアによるエスカレーションの一歩だ」と危機感を露わにしていた。

「最悪の為政者コンビ」が仕掛けた危険な賭け

領土拡大のためにはウクライナ市民の虐殺を厭わないプーチン氏と、外貨獲得のために自国民を「肉挽き機」に差し向ける金正恩氏。“最悪”の為政者コンビが悲劇に拍車を掛けようとしている。

もっとも、この「同盟」の行方は不透明だ。北朝鮮兵の戦闘能力への疑問、おそらく生じているであろう言語の壁による現場での混乱、そして何より、北朝鮮以外の外部世界との接触が体制の安定性を揺るがすリスク――。金正恩政権にとって、無視できない課題だ。

すでに18人の兵士が脱走したという事実は、北朝鮮にとって深刻な事態の序章となる可能性がある。携帯電話やソーシャルメディア、あるいは高品質なタバコといった些細な体験が、「体制の嘘」を暴露する契機となりかねない。軍事支援の見返りとして得られる資金や技術移転の魅力と、体制の根幹を揺るがしかねないリスクの間で、北朝鮮はどのような選択を迫られるのか。

金正恩氏が打って出た危険な賭けは、ウクライナ戦争の行方を左右するに留まらず、北朝鮮の将来にも大きな影響を及ぼす可能性がある。金正恩政権の賭けの代償は、予想以上に重いものとなるかもしれない。

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