コミュニティは大きな力になる
明確な目標を定めたクリエイティブな活動は、何でもCALMプロジェクトと見なせる。「1年間毎日写真を撮ること」を目指して写真を勉強する、「テキストベースのロールプレイングゲームをつくる」ことを目標にしてプログラミングを学ぶ、「母親の誕生日プレゼントにする」ことを目標にしてキルトの技術を身につける、などだ。
また、人間関係の力を活用すれば、CALMプロジェクトの効果はさらに高まる。第3章で見たように、同じ目的を持つ友人や集団と一緒に何かに取り組むと、人とのつながりから大きな力を得られる。仲間と学び合い、アイデアを交換し、成功を分かち合える環境にいると、物事はうまくいく。
絵を描くことをプロジェクトにするのなら、絵画の教室や交流会に参加してみよう。文章を書きたいのなら、同じ志を持つ人たちのグループやワークショップに参加してみよう。どんなプロジェクトに取り組むのであれ、その分野のコミュニティに参加することからは、計り知れないエネルギーを与えてもらえる。
患者の回復スピードを左右した“意外なもの”
ペンシルベニア州郊外にある病院の静かな病棟では、2つのグループの患者たちが胆囊摘出手術から回復しつつあった。だが、回復のスピードは両グループで同じではなかった。
一方のグループの患者が入院していた部屋の窓からは、葉の茂った静かな木立を見渡せた。もう一方のグループの患者が入院していた部屋の窓は、殺風景なレンガの壁に面していた。環境美学を研究する新米准教授だったロジャー・ウルリッヒは、この違いがもたらす効果に興味を持ち、データを分析した。
その結果、窓から緑が見える病室にいる患者は、壁しか見えない病室にいる患者に比べて、平均して約1日早く治癒し、鎮痛剤の量が少なく、合併症の発生率が低いという驚きの事実が明らかになった。