「好きを仕事にする」にはリスクがともなう
一番の目標は、専門家や達人になることではない。楽しむことと、元気になることなのだ。
エネルギーを充電するという意味では、趣味を「仕事」に変えたいという衝動は抑えたほうがいい。
2017年、ジョージ・W・ブッシュは『Portraits of Courage』(勇気の肖像)と題した画集を出版した。ブッシュが描いた退役軍人たちは多少デフォルメされてはいたものの、批評家はその画力の高さに驚いた。
とはいえ、このように大勢の目にさらしたり、収益化したりするといった形で趣味の成果を公にすることにはリスクがある。趣味が純粋な娯楽ではなく、大変な労力を投じなければならない副業のようなものになりかねないからだ。
僕たちが英気を養うためには、他人の目を一切気にせずに、心から楽しめる何かを持っておくべきなのだ。
趣味を「プロジェクト化」してみる
創造的な活動を通じてエネルギーを充電するもう1つの方法は、個人的な「CALMプロジェクト」に取り組むことだ。
はっきりとした目標や期間を定めない趣味とは異なり、プロジェクトでは明確な始まりと終わりを設ける。最終的な目標に達したときに達成感を味わえ、有能感や自律性も高めやすい。
この本を書き始める前(そして、新米医師の挫折から立ち直った後)、僕にとっての創造的なCALMプロジェクトは「生産性について学ぶこと」だった。来る日も来る日も、仕事から帰ったら音楽をかけて机に向かい、「物事を効率的に終わらせること」をテーマにした文献を読みふけった。
最新の心理学研究の成果に触れることで知識が増え、有能感が上がった。自分の好きなことを、自分なりのクリエイティブな方法で追求できるので、自律性も高まった。本業である医師の仕事とはまったく違う活動に没頭することで、大きな解放感も得られた。そして、当時は気楽にこの活動ができた――文献や本を読んでいるあいだは、リラックスして穏やかな気持ちでくつろげた(とはいえ、この本を書くことが決まってから、これはそれまでよりも重要な意味を持つプロジェクトになった)。