●池谷先生からのアドバイス
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ブーバ・キキ試験

図を見てください。それぞれブーバとキキという名前がついていますが、あなたはいったいどちらがブーバで、どちらがキキだと思いますか。

おそらく1番がキキ、2番がブーバだと考えたはずです。実はそう答えるのはあなただけではありません。「ブーバ・キキ試験」として知られるこの質問をさまざまな言語圏で実施したところ、約98%の人が同じ回答をしています。

なぜ1番がキキなのかを論理的に説明できる人は、まずいないと思います。それにもかかわらず、なんとなく正解がわかる。これを直感といいます。

直感のもとになるのは方法記憶です。自転車に乗るときは体中の筋肉を使いますが、あまりに動きが複雑で、それを意識するのは困難です。しかし、実際は方法記憶として無意識の脳が記憶しているため、筋肉の動きを意識しなくても自転車に乗れます。直感もこれと同じで、意識はできなくても、無意識の脳が膨大な処理をして答えを導いてくれるのです。

直感は、経験を積めば積むほど精度が増します。なんとなく浮かんだアイデアをうまく説明できずに窮することがあるかもしれませんが、キャリアを積んだビジネスマンなら選択に自信を持つべき。若い部下に「根拠がない」と指摘されても、無視してしまえばいいのです。

一方、理由を説明できない「直感」とは異なり、思いついたあとに理由が説明できる考えを「閃き」といいます。すでに説明したとおり、閃きを生むには睡眠中の無意識の脳に考えてもらうのがもっとも効果的だと私は考えています。

ただし、とにかく情報を入力すればいいというものでもありません。日本語でいう「多様性」には、雑多な状態である「バラエティ」と、派生してつながりがある「ダイバーシティ」という二つの意味があります。閃きとは、バラエティになっている情報を整理して、ダイバーシティに変えることで生まれます。

その処理を睡眠中の脳に任せるのですが、「何がいま問題になっているのか」をきちんと理解できていなければ、バラエティはバラエティのまま。「起きたらあの問題を解決しよう」と意識することで、はじめて脳は雑多な情報から有機的なつながりを見つけようとするのです。夜眠る前には、情報をインプットすると同時に、課題を再確認することです。私は毎日これを実行しています。