「スタートアップの呪縛」から抜け出すべき
メルカリは2017年にも大きなトラブルに直面していた。現金や電子マネーが相次いで出品され、額面以上の金額で取り引きされていることで大きな批判を浴びた。盗品や規約違反の商品の出品も相次いでいた。同社は人員が不足する中で、監視と削除を行った。
メルカリは同年夏に東証への上場を申請したが、同年末に予定していた上場が半年遅れる結果となった。その後、トラブルも減り、業績も順調に拡大し、2022年6月にはマザーズ市場から東証プライム市場に移行した。
今年の9月にはNHKの「新プロジェクトX」において、「日本発!革命アプリ世界へ 巨大フリーマーケット誕生」というタイトルで、メルカリのグローバル市場への挑戦が紹介されている。
筆者自身、この番組を観て胸が熱くなった視聴者の一人なのだが、今回のトラブルをみていると、急速な成長にガバナンスが追い付いていない企業の姿が見えてくる。
社会に対する影響力が大きくなっているにもかかわらず、業績拡大に邁進するあまり、足元のリスク対応が疎かになる。これはメルカリに限らず、多くの企業で起こっていることだ。
ライブドア、ペッパーフードサービス、コインチェック、ビッグモーターなど、トラブルによって企業が危機に陥った事例は枚挙にいとまがない。
「社会的企業」として担うべき役割
11月17日、メルカリは顧客に対する謝罪と、体制の見直し・強化を発表した。
過去にトラブルを乗り越えて大きな成長を果たしたメルカリは、自浄作用があるように思えるし、おそらく、復活できなかった多くの企業と同じ轍を踏むこともないだろう。
メルカリが、再び困難を乗り越えて、さらなる成長を遂げると同時に、「社会的企業」としての役割を担っていくことを期待したい。