そもそも「陰謀」「陰謀論」とは何か

――そもそも、陰謀論者とはどのような人々なのでしょうか。

まず、陰謀論とは何かを知ることが非常に重要だ。陰謀論と実際の「陰謀」とは違う。陰謀とは、複数の個人が協力して、ひそかに何かを行い、それが公になることだ。例えば、複数のたばこ会社が、たばこの有害な影響を隠蔽すべく共謀したり、大手航空会社の幹部らが組立ラインの問題を隠蔽すべく共謀したり、といった具合だ。つまり、「陰謀」とは現実に起こったことを意味する。

一方、陰謀論とは、陰謀や策略を「理論化」したものだ。通常、実際には存在しないか、正しく解釈されていない証拠に基づいている。「ケネディ大統領の暗殺は複数の人物や機関による共謀だ」という説のように、最も人気のある陰謀論の数々はまったく証明されておらず、「理論」の域を出ない。

何かの事件が公になると、多くの場合、「まず、陰謀論ありきで、陰謀論が現実になった」と考える人がいる。例えば、アメリカの中央情報局(CIA)が行ったとされるマインドコントロール実験「MKウルトラ」(注)が好例だ。

(注)1950年代~60年代に、CIAが軍人や精神疾患患者などを被験者に薬物を投与したりや電気ショックを与えたりして洗脳しようとした人体実験。

人々は「ほら、陰謀論が現実のものとなった」と言うが、そうではない。同件は機密扱いだったため、それが明るみに出るまで誰も知らなかったのだから。陰謀論とは、そういうものだ。

Qアノンはもれなく陰謀論者だった

――Qアノン信者と陰謀論者は同一ですか。

Qアノン信者は陰謀論を「リアル」だとみなす人々のことだ。つまり、本当のことだと考えている。彼らのほとんどは、Qアノン以外の陰謀論からQアノンにたどり着いた。

南部ノースカロライナ州ローリーで開催された「自由のための世界集会」に、トランプ・トレインやQアノンなどの旗を持って70人以上が参加した(写真=Anthony Crider/CC-BY-2.0/Wikimedia Commons

Qアノン信者の共通点は何か、特定の層から成っているのか、主に保守的な人々なのか、男性が大勢を占めているのか、といった質問をよく受ける。保守派が多いのは確かだが、全員がアメリカの中西部に住んでいるわけではなく、大都市居住者も多い。

それでは、Qアノン信者の共通項は何か? (信者になる前から)すでに陰謀論者だったという点だ。