ショルツ政権は、いわゆるレームダック化が進んでおり、次期総選挙での敗北は必至である。そのため、SPDもB90/GrünenもFDPも、各自の支持者層に対するアピールに専念しているのが現状である。どの政党も議席を減らすことが確実な情勢を受けて、どれだけその傷を浅くすることができるかという観点から、勝手な主張を展開する。
来年秋に行われる総選挙では、かなりの確率で、中道右派のキリスト教民主同盟及び同社会同盟(CDU/CSU)が首班となる政権ができる見通しである。とはいえ単独過半数には満たないため、組閣協議は難航が予想される。政権が軌道に乗るのは再来年となる可能性が高いため、少なくとも2026年まで、ドイツの財政運営は厳しい状態が続く。
これから迎える大失業時代
メルケル前政権以来、ドイツは脱原発と脱炭素の二兎を追う経済戦略を追求してきた。後任のショルツ政権はそれを引き継いだが、新たにロシアショックが生じたことで、それに脱ロシアを含めた三兎を追う経済戦略を推進することになった。その結果、ドイツの国際競争力は、コロナショック前に比べて著しく低下することになってしまった。
確かにVWの場合、経営戦略のミスという要因は看過できない。とはいえ別の見方をすれば、VWの問題は、それまで中国の高成長を、ドイツが間接的に享受できた時代が既に終わったということを端的に物語る出来事だといえよう。いずれにせよ、経済の実情に鑑みれば、VWのみならずドイツ全体で、多くの雇用が失われる事態になるだろう。
あるいは、雇用そのものを維持したいのなら、日本が経験したように、賃金を引き下げることを通じた調整を行う必要がある。しかしこれも受け入れられないとなると、それこそドイツ経済は競争力を改善することができない。果たして、ドイツは今後、どのようなかたちで痛みを負うことになるのだろうか。注視したいところである。
この話は日本も通じるところがある。先般の衆院選では与野党ともに最低賃金の引き上げばかりをアピールしていたが、そうした賃上げの取り組みは同時に雇用調整の弾力化とセットで考えなければならない問題である。具体的には、解雇規制の緩和を通じて、人材のミスマッチを解消しなければならない。これは本来、日本が避けて通れない道だ。
(寄稿はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です)