「悪夢の民主党政権」を連呼すべきだった
ただ、確実に言えることは今回の立憲ほか野党の善戦が、実質的な「アベ政治(安倍晋三さんによる長期政権)の終わり」を意味し、自民党を中心とした一強他弱の政党・情勢構造を打破する可能性が出てきたとは言えます。自民党も、本来であればもっと声高に「悪夢の民主党政権」を連呼するべきであったし、裏金議員とのレッテルについても政治資金規正法上の未記載については立憲幹部の安住淳さんやれいわ新選組の大石晃子さんなど野党も処分されずそのまま立候補している人物がいるという対抗ネガキャンは行うべきであったと思います。
なにより、今回自民党の苦戦については、序盤は自民党公約のできの悪さ、終盤は支部への2000万支給問題という、戦術的に「それはもっとやりようがあったんじゃないの」というしょうもない理由で出口調査での激戦区取りこぼしを起こしていたのは印象的でした。特に、自民党公約においては「ルールを守る」という、実に石破茂さんらしい抽象的だが力強いテーマが前面に出たものの、野党がマスコミと結託して進めてきた「裏金議員」「政治とカネの問題」から自民党政治を終わらせるというロジックには到底対抗できませんでした。
裏金問題で自民党候補が苦戦する中、自民党が「ルールを守る」と公約で連呼しても「あなたがたがまずルールを守りましょうよ」と有権者に思われてしまうのは至極当然のことです。また、国民民主党も特に政策実現の根拠はないけど国民の生活にダイレクトに響く「手取りを増やす」というスローガンに浮動票を奪われて、政治家個人の主張する力に依存した選挙戦に終始せざるを得なくなったのは決定打でした。
「手取りを増やす」は、手柄の横取りである
よくよく自民党の公約を見ればいいこともたくさん書いてあるのですが、野党が仕掛ける本格的な「政治とカネ」批判攻勢に対抗できるのは「自民党が政権を維持すれば、あなたの生活はここまで良くなるのだ」という政策の実現力を背景にした納得感しかなかったのは明確です。実際、7月8月の国民所得が物価上昇を上回ったのは岸田文雄前政権の成果であって、国民民主党の「手取りを増やす」連呼はある種の手柄の横取りであり、財源も示さないポピュリズム的なばら撒きにすぎないという反論、批判は自民党からもっとしていかないとならなかったのも事実です。
各選対でも「国民民主党がここまで伸びるとは思わなかった」と敗戦後の反省で述べていますが、実際には国民民主党が無党派の勤労層から幅広い支持を掴んでいることは明らかで、言い方は悪いですが国民民主党と似たようなことを有権者に訴えかけなければならなかったのは当初から想定をされていました。