「紙の健康保険証を復活させろ」で大丈夫?

また、来年1月の通常国会よりも前に、物価高に対応するための国家公務員の給与を引き上げる給与法(一般職の職員の給与に関する法律)の改正を行うための臨時国会を召集しないといけません。少数与党で乗り切ろうとする場合、ここの採決ができなくて年末にいきなり議会運営が行き詰まって総辞職というハードルも出てきます。「石破さんは選挙に負けてパッと降りていれば自民党としても禊になったのに、変に粘ったので一層グダグダ感を国民に見せてしまい、ますます追い込まれる」という事態にならないことを祈ります。

これから自公政権のオルタナティブとして、立憲民主党中心の大型野党連立が二大政党政治に移り変われるかが焦点となります。得票数はともかく議席数では躍進し、ご祝儀的に有権者からの支持が増えた立憲民主党が、スマホ全盛でネット利用大前提のこのご時世に「紙の健康保険証を復活させろ」などと言い出し正直大丈夫なのかという気持ちも抱きます。

そもそも今回の衆議院選挙では野田佳彦さんの方針として「政治とカネ」の問題を中心とする自民党政治批判にフォーカスを当て勝ち切った一方、具体的な経済政策や目の前に迫る社会保障改革(26年診療報酬改定や薬価・薬が届かない問題など)も安全保障問題も論戦の中に組み込まずに政権交代を目指そうとしています。確かに自民党はだらしないし約束も守らないしどうしようもない面も多いのですが、その代わりに立憲民主党が本当に政権担当可能なレベルできちんとした諸政策を幅広く見ていける優れた代替先なのかという保証は、まだ国民の前に提示されていないというのが現実でもあります。

そのまま過去の立憲民主党のように一桁パーセントの支持率に戻っていくのか、一定の存在感を国会で示しながら政策面での支持を集めて二大政党までもっていけるのかはまだよく分かりません。国民民主党や日本維新の会も含めて野党大連立で自民党を下野に追い込めるのかどうかは次の特別国会と臨時国会ですべてが決まりそうな気がします。

国会議事堂とイチョウ
写真=iStock.com/gyro
※写真はイメージです

17年越しに返ってきた「ブーメラン」

最後に、筆者的な見解で述べるならば、2012年の第二次安倍政権以降足掛け12年ほど、曲がりなりにも安倍、菅、岸田各氏が継続的で安定した政権運営により政策を次々と実現することができて、国民にとって文句はありつつも穏やかな政治が続いてきたと言えます。安定した政治こそ国益という面があり、これからまた日本は00年代以降のような不安定な政権が次々と潰れては野合するような状態になりはしないか、非常に心配するところでもあります。

しかし、これはあくまで民意によってこのような状況になったものであるし、そのトリガーは自民党の緩みや自滅、傲慢が背景にあったことは理解しておく必要があります。いみじくも、政権運営で苦境に陥っていた麻生太郎さんに対し、石破茂さんが総理辞任を求める発言をしたブーメランが、17年越しに返ってきて石破さんの眉間に当たらないよう祈るばかりです。

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