来年の参院選までに「石破降ろし」は起きる
そもそも、石破茂さんは国民からの総理待望論が高く、党内非主流派として、ときには安倍政権など政権のあるべき姿を正論で論じてきたがゆえの声望と人柄への信頼があったのは間違いないのです。ただ、各調査で見ると石破政権への支持率自体が47%(不支持が48%)という世論調査の数字を筆頭に、地域別・選挙区別で見ると「投票所に足を向けた人からの評価」である出口調査では20%台後半の支持率のところも珍しくありません。
また、石破茂さんへの評価では、60代以上の地方在住者の支持率こそ60%台と高いものの、都市部勤労層ではかなりの選挙区で4割を切っています。これでは、派手な総裁選で国民の期待を集め、勝てる選挙の顔として立てて早期解散総選挙を遂行した自民党の戦略自体が間違っていたといわれても仕方がない状況になります。「石破茂には国民的人気がある」という話は何だったのか、虚心坦懐に振り返る必要に迫られているのです。
こうなりますと、総理総裁の留任を決意した石破茂さんが、特別国会を経て少数与党の苦難もわかって続投を強行しても、来年7月に予定される重要な参議院選挙と東京都議会選挙は戦えないことは間違いありません。党内融和は望むべくもなく、閣僚は別としても早期の退陣を求める「石破降ろし」は起きることでしょう。
高市氏の前回推薦人の過半数は「裏金議員」
また、少数与党として、日本維新の会や国民民主党と協調できる政策分野で部分的な連合を組んで対処していくとしても、予算成立では重大な局面が起きる可能性があり、バーターとして内閣総辞職を条件に予算審議に応じる、予算に賛成するという屈辱を踏む可能性があります。その場合は、追い込まれて退陣後に自民党は改めて総裁選を行うことになるでしょう。そうでなくとも、通常国会の会期末で不信任案を出される前に辞任に追い込まれることになり得ます。
いわば、もはや選挙の顔として機能しないことは明白になっている石破茂さんを、自由民主党はいつまで総理総裁として引っ張るべきなのか、降ろすにしても誰を代替で総裁に選任するかという、非常に困難な状態に陥ります。
また、高市早苗さんへの声望は一部党員に高いことは事実です。これは、自由民主党が結党以来支持者の一角として持ち続けている清和研究会(保守傍流)特有の、日本土着の新自由主義的価値観を持つ自民党員・党友の皆さんがかなりおられることの証左です。思想としては明らかに「働かざる者、食うべからず」であって、一貫して自民党の根底にある考え方を持つ人たちであると言えます。ただ、前回総裁選でも石破茂さんと共に決選投票まで残ったことは高く評価される一方、高市さんを支えた前回推薦人は20名中13名までもが報告書未記載議員(裏金議員)で、今回極めて強烈な国民からの審判を受けたことは忘れてはなりません。