維新の票が国民民主、れいわ新選組に流れた

もっとも減少幅が大きく党勢の衰えが顕著なのは日本維新の会(805万から509万)で、金城湯池である大阪府と一部兵庫県の得票を除くと147万票から75万票と半減に近い得票となっていますが、これらの票の流れていった先はきれいに国民民主党(259万から616万)とれいわ新選組(221万から380万)になっています。つまり、3年前は自民、公明、維新へ投じられていた票が、国民、れいわに流れましたというのが今回衆院選2024の単純な総括になります。

現段階では、「立憲が大きく支持を伸ばした」わけではなく「自民党に長年投票していた人が、今回は投票に行かなかったか、国民民主党など他党に投票した」感じでしょうか。

個別の属性で言えば、国民民主党もれいわ新選組もインターネットによるメディア接触が多く、39歳以下の勤労層・若者層からの支持が厚く、どちらも所得層がやや低い人たちからの票が流れているという点で共通しています。国民民主党は明確に「手取りを増やす」という政策目標をスローガンに掲げる一方、具体的な財源や社会保障問題に対する政策主張は乏しくなっています。また、れいわ新選組もあまり具体的な政策論に踏み込まないイメージ戦略中心の選挙戦を行ってきたことから、ある意味で、自公政権のアンチテーゼ、一種のポピュリズム政党としての側面を色濃くしているというのが現状です。

持続的な「二大政党制」につながるのか

ただし、これらの若い人たちからの支持層を稼いだ国民、れいわ両党とは異なり、立憲も日本共産党も支持層の不可逆的な高齢化に悩んでおり、党支持層の構築からすると国民、れいわは立憲共産の補完的なポジションに来ていることは注目されます。本来、立憲や共産が増やすべき若い支持者はおおむね国民やれいわ両党に流れてしまっているのは、2015年に集団的自衛権行使を認める安全保障関連法案に反対する国会デモに絡んで学生主体の左派団体「SEALDs」が躍動したものの党派への組み入れに失敗した経緯は思い返しておく必要があります。

都知事選に立候補した蓮舫の応援演説をする野田佳彦(新宿駅前)
立憲民主党の野田佳彦代表(新宿駅前)(写真=Noukei314/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

そこへ、前回の都知事選や自民党総裁選、立憲代表選でも明らかとなったように既存政党への有権者の忌避感、政治不信という土壌がある中で、政治とカネの問題が今回立憲民主党側(およびそれを支援するメディア)により大きな争点となったことが自民党の苦戦を象徴するような大物議員や現役閣僚の落選につながっていたのは間違いありません。もっとも、立憲が主張した政治とカネの争点は、自民党の得票を削って激戦区での野党(主に立憲)候補の勝利に寄与したものの、必ずしも立憲への投票行動を促す動きには至らなかったことは特筆されるべきとも思います。

これが、中長期的な立憲民主党の支持率改善に貢献するかどうかは今のところまだよくわかりません。後述しますが、投開票日後の各調査では、自由民主党への支持が10%以上減少し、立憲民主党や国民民主党への支持率は倍増近くになっています。これが持続的な「二大政党制への道」になる過程にあるのかは、数カ月連続して支持率の動向を見ない限りわからないでしょう。