しつこく観察して計画策定に時間をかけすぎない
企業は、様々な新しいことにチャレンジしたり、また課題にぶつかったりと、大変苦労しています。その時にどのようにして解決するのかというのはとても大きな問題です。
イノベーションのジレンマで知られるハーバード大学教授のクレイトン・クリステンセン氏は、ベンチャー企業にとって必要な4つの思考パターンを示しました。
これはベンチャー企業に限らず、多くの企業の人材育成にとって、重要な概念です。
それは①質問する、②しつこく観察する、③仮説を立てて実験する、④アイディアネットワーキングを持つというものでした。
まず質問するというのはとても重要です。いろいろな経営者の方と会って感じるのは質問力が高いこと。時間が限られているときには、ある程度的を絞って質問しなければなりません。その時に本質をついた質問ができるかというのはとても重要になります。
次にしつこく観察するというのもとても重要な観点です。最近、経営学の分野では、OODAループが注目されています。それはオブザベーション(観察)、オリエンティッド(方向付け)、ディシジョン(決定する)、アクション(行動する)というループを高速で回します。
つまり、計画策定に時間をかけすぎないのです。ある経営学者は、日本ではPDCAをやりすぎていると発言しています。とりわけ、「プランを作るPに時間をかけすぎて、結局世の中の流れについていけない」と指摘しています。
観察して、行動を起こして、反省して、また観察するといった動きがとても重要になるのだと思います。OODAループとPDCAサイクルを比較してみましょう。
PDCAサイクルは、後戻りすることが難しい「サイクル」であるのに対し、OODAは後戻りすることが可能な「ループ」になっています。だから、OODAはサイクルではなく、ループと呼ぶのです。
変化する状況の中で、過去の経験やしがらみ、因習にとらわれることなく、現状に合った行動をするために設計されているのがOODAループです。
特にオブザベーション(観察)のステップでは先入観を持つことなく、公平かつ客観的に行うことが推奨されているところが、変化が速い現在に適しているとされます。
そのため、不確実性の高いVUCAの時代ともいわれるような、将来を予測することが困難な変化の激しい昨今において注目されています。
自分がどう考えるかではなく、問いを誰と話すべきか
なお、OODAループは米軍で採用された考え方です。ベトナム戦争の時代には計画・実行・統制サイクルをベースに組織を運営し、ホワイトハウスの「ウォールーム(戦略司令室)」で作戦指揮計画を立て、地球の裏側でそれを実行させるというやり方で動いていました。
そしてそれが失敗するなか、新たな手法として導入されたのがOODAといわれます。2011年ウサマ・ビンラディン急襲作戦ではOODAループを活用した作戦がうまくいったといわれています。
そして実験するのもとても重要です。机上の空論と現実では全く違うというのはよくあること。机上である程度シミュレーションするから、実験がうまくいくという面もありますが、机上での議論シミュレーションと実験をうまく組み合わせていくことが大事です。
やはり、「やってみなはれ」というのがとても重要だと思います。松下幸之助も1970年の万博の時、自分たちのパビリオンのところでやってみないとわからないではないかといってオペレーションを実験したようです。
さて、これらを踏まえた結果、特に大事なのがやはりアイディアネットワーキングです。eBayの創始者であるピエール・オミダイヤ氏は、何か疑問ができたときには自分がどう考えるかではなく、まずこの問いを誰と話すべきかと考えているそうです。
相談をして次のアクションにつなげてくれる人もいれば、こちらの取り組みの悪いところを指摘して話が進まなくなる人もいます。
話を潰すのではなく、話を発展させてくれる人は誰なのかという問いかけはとても重要です。年がら年中しゃべっている関西人は、「誰と話すべきか」をとてもよく考えています。
賛成派も反対派も間違っている事はいっていない。ただ話を進めるのであれば、自分の賛成派を味方につけたほうがいいですし、賛成派のロジックを使って新たなものを生み出していくべきでしょう。