議論を深め新しい価値を生み出すには、どんなコミュニケーションが必要か。日本総合研究所 調査部長/チーフエコノミストの石川智久さんは「東京では正しいことを追求する空気があるが、関西では馬鹿みたいな雑談に重きを置き、その結果『ひょうたんから駒』のように新しいものが生まれる。関西の会話でよく使われる『知らんけど』という言葉に、東京の人はあまり良いイメージを持っていないが、この言葉は会話を続けることに有効なツールである」という――。
※本稿は、石川智久『大阪 人づくりの逆襲』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
「ネアカ人生」を提唱した酒をあまり飲まないビール会社の経営者
職場や学校で、様々な教訓を先輩方から教えられたことはありませんか。
漢文調の格調高いものから、思わず「くすっ」と笑える面白いものまでいろいろあると思います。特に関西ではやはり少しコミカルなもののほうが心に残るようです。
日本一明るい経済新聞の編集長・竹原さんは「あいうえお経営」という言葉を提唱しています。「あ」が明るさ、「い」は意志の強さ、「う」は運が良いと思い込むマインド、「え」は縁を大切にする姿勢、「お」は大きな夢です。
確かに社員が全員、この「あいうえお」を追求していくと、会社はどんどん元気になるでしょう。
この言葉を聞くと思い出す一人の経営者がいます。
それは住友銀行の副頭取をされ、その後アサヒビールの社長も務めた樋口廣太郎氏です。
樋口さんは明るさを大事にする「ネアカ人生」を提唱していて、それにまつわる書籍も出版しています。経営危機であったアサヒビールを立て直した意志の強さは、尋常ではなかったでしょうし、彼が書いた本などにも書かれていますが、「自分は運が良い」と常々おっしゃっていたようです。
縁を大事にするに至っては、アサヒビールに転職する際に、銀行で一緒に働いてお世話になった方々のお墓参りをし、お宅を弔問していったそう。ビール会社の経営者でありながら、お酒はあまり飲めず、「ただ夢を持って人生に酔う」ともいっています。
樋口氏の「あいうえお」はとても大きな意味があると思います。