「自民党の裏金問題」を岩田さんにぶっ込む

そしてもう1つ。自民党の派閥のパーティー券収入不記載問題については、外せない。

この問題が明るみになった頃に岩田さんが明かしたところによると、2022年の時点で、安倍元総理は不記載をやめようと指示を出して一旦そうなった。なのに、安倍元総理が亡くなったあとにまた不記載・裏金スキームが復活したという。なぜ、誰が元に戻した? これは政治まわりでは岩田さんが語ったすごいスクープなのだ。

しかしだ。安倍元総理が不記載をやめようと言っていたことを知っていたのなら、今になってからではなく、2022年当時に明らかにして追及すべきではなかったのか。ジャーナリストならば。やはり、この点を岩田さんに突っ込まずにはいられない。率直にぶつけてみることにした。

そんなことをいきなり聞くなんて、嫌な感じがするだろう。「ツッコミに来たのか」と不快に思われるかもしれない。それでも、一所懸命に調べ、準備し、あえてそれをやったのだ。

そんな僕の投げかけに、岩田さんは「それは、違うんですよ」と、至極真摯に答えてくれた。

一歩踏み込んだら、アクセントになって波が起きる

さすがだ。具体的なやり取りが気になったら、ぜひ『週刊新潮』2024年3月21日号をご覧いただきたい。

ともかく僕は、彼女の話には論が通っており、それ以上ネチネチやりたくない。ここで「そんなことはないでしょ」と僕が言ってはいけない。相手を怒らせるための質問ではない。一歩踏み込んで、本当に聞きたいことを聞くための質問なのだ。だから、「そうなんですね。じゃあ、もう突っ込むのはやめます」と、いとも簡単に引いた。時に消化不良を覚悟で、犬だって鳴くのをやめることがあるのだ。

何より、政治家と違って、僕が本気で聞きたかったことに逃げずに、かわさずに、真っ直ぐに答えてくれた岩田さんの度量勝ちだ。「負けて勝つ」ための準備をしただけなのだ。

古舘伊知郎『伝えるための準備学』(ひろのぶと)

その後は、いろんな脇道にそれつつ、話は仏教などにも発展した。そこはコラム欄の紙幅の都合で入っていない。岩田さんとは政治的立場や考え方は多少異なるものの、互いに本音で語ることで、理解し合える点や共通点も見出せた充実の対談になったと思っている。

ちなみに、僕はこの対談に向けて、先に挙げた2点以外にも準備していた。でも、かなりの準備を捨てることになったのも事実。だが、それでいい。それがいいのである。

一歩深く踏み込み、本気で聞きたいことをちょっと聞けたら、それがアクセントになって波が起き、あとは楽しく話すという波乗りに入れる。しつこい追求のための準備を全部捨ててしまうのだ。

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