医者も病院も、自分で見極め、選ぶ
それでは、自分にとってよい病院、そしてよい医者とは、どのようにして見分けるのでしょうか?
まず先にお伝えしておきたいのが、恐ろしいことに、日本の医師は、患者のその後の人生については考慮せず、「死にさえしなければなんでもいい」と思っている人が圧倒的に多いということです。
彼らは、自分の病院を訪れる患者の生活の質がその後どれだけ低下してしまうか、どのような後遺症が残るのかといったことには、残念ながら関心を示しません。また時には、患者よりも、自身のメンツを優先することも往々にしてあります。
そういったなかで、患者の想いや不安にしっかりと向き合い、適切な治療を施してくれる医者に巡り合えるかどうかは、非常に重要です。
よい医者と出会えるか否かで、心身の健やかさや安定感、そして人生の幸福度は大きく変わってくるでしょう。
信頼できる医者の条件の一つとして、ことさらに標準的な数値や方法にとらわれるのではなく、患者一人ひとりの状態に合わせた、柔軟な治療ができるということが挙げられます。「基準値至上主義」の医師は信用できないと私は思っています。
たとえば薬を処方したあとは経過観察を丁寧に行い、この患者さんは薬の量を減らしたほうがよいようだとか、この方は血圧が多少高くても調子がよさそうだなどと、患者さん一人ひとりの状態を踏まえながら、柔軟に対処すべきです。
実際に私も、「先生に処方された薬を飲んだら調子が優れない」などと患者さんから言われれば、すぐに量を減らしたり、別の薬に替えたりします。そのようなことを繰り返しながら、その患者さんにとって最適な治療法を見つけていくのです。
また、特定の疾患や臓器だけを診る、というスタンスの病院は推奨しません。その人の年齢、体質、その他の持病などといった要素も考慮しながら総合的な治療を施してくれる病院を探しましょう。そういった意味では、個別の臓器を専門的に診ることが多い大学病院は、高齢者にとっては最良の選択とは言えないと感じています。
そして主治医は、話すと気持ちが楽になるような、通院するのが楽しみになるような人であることが大切です。心身を健康にするための病院で、不安やストレスを抱えてしまっては本末転倒でしょう。
場数を踏めば、相性のよい医師と出会える可能性もそれだけ高くなります。
医者も病院も、自分にとってベストな選択肢を自分で見極め、選ぶ。それはシニアに求められる大切な知恵だと思います。