夫の異変

MRIで判明した新たな骨転移を受けて、主治医は強力な抗がん剤を勧めるが、夫はやりたがらない。以前やっていた点滴型のものは通院が大変なうえ、食欲が落ちるばかりか、吐き気までして身体がだるく、つらかったという。だからあまり効果はないが、最初に使用した抗がん剤TS-1に戻したのだ。

「今でも痛みで食欲が落ち、5キロ以上も体重が落ちているのに、もっと強い抗がん剤でさらに食欲が落ちたら、体力が落ちてがんに勝てないのではないかと思いました」

ふと夫の足を見ると、あちこちに青あざがある。どうしたのかたずねると、

「痛いから揉んだり叩いたりしたらこんなになっちゃって……」

笠間さんは可哀想で見ていられなかった。

写真=iStock.com/Olena N.
※写真はイメージです

主治医は、

「TS-1は効果がないので、2週間後からアブゲムに変えましょう。やらないという選択をしたらキャンセルしてください」

この頃から夫は話しているとき、呂律が回らなくなってきていた。それを笠間さんが指摘すると、カチンときた夫と喧嘩になった。

足や腰が痛いらしく、ズボンの脱ぎ履きも一苦労で、入浴するのも危なっかしくなっていた。

やがて5月末には、ほぼ寝たきり状態に陥ってしまった。(以下、後編へ続く)

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