夫の異変
MRIで判明した新たな骨転移を受けて、主治医は強力な抗がん剤を勧めるが、夫はやりたがらない。以前やっていた点滴型のものは通院が大変なうえ、食欲が落ちるばかりか、吐き気までして身体がだるく、つらかったという。だからあまり効果はないが、最初に使用した抗がん剤TS-1に戻したのだ。
「今でも痛みで食欲が落ち、5キロ以上も体重が落ちているのに、もっと強い抗がん剤でさらに食欲が落ちたら、体力が落ちてがんに勝てないのではないかと思いました」
ふと夫の足を見ると、あちこちに青あざがある。どうしたのかたずねると、
「痛いから揉んだり叩いたりしたらこんなになっちゃって……」
笠間さんは可哀想で見ていられなかった。
主治医は、
「TS-1は効果がないので、2週間後からアブゲムに変えましょう。やらないという選択をしたらキャンセルしてください」
この頃から夫は話しているとき、呂律が回らなくなってきていた。それを笠間さんが指摘すると、カチンときた夫と喧嘩になった。
足や腰が痛いらしく、ズボンの脱ぎ履きも一苦労で、入浴するのも危なっかしくなっていた。
やがて5月末には、ほぼ寝たきり状態に陥ってしまった。(以下、後編へ続く)