「何でも屋」と思われてはならない
【損】弊社なら御社の課題を解決できます→【得】○○のことなら、お任せください
「記憶に残る幕の内弁当はない」。作詞家でヒットプロデューサーでもある秋元康さんの言葉です。幕の内弁当は、いろんなおかずが入っていて、見た目も華やかで、幅広い世代に愛されています。でも、これだという目玉がなく、違いが印象に残らず、結果、記憶にも残りにくい。
仕事では、何でも屋と思われるべきではありません。提案は、仕事の始まりです。何でもやります、どんな課題にも対応します。これを言えるのは実績をコツコツと積み重ねた匠のような存在だけの特権です。特に初めてのクライアントへの提案などでは、まだ実績がありませんから、いまいち信頼されなくなってしまいます。特定の分野や手法、業界などにフォーカスすることで専門性をしっかりと伝えましょう。
ただし、特化すれば何でもいい、というわけではありません。相手の課題に対して、実現に必要なスキルと、こちらの武器がしっかり一致する部分を具体的に提示します。例えば、「弊社はデータ分析に強みを持っていますので、御社のマーケティング戦略の最適化に貢献できます」といった具合です。もし相手の課題を絞れない場合は、(企業相手に限定されますが)プレスリリースを調べることです。直近にどういった領域にどう取り組んでいるのかが端的に分かるからです。
うまい質問で相手の思考が一気に動き出す
【損】御社の課題は何ですか?→【得】今期注力するのはやはり成長領域への投資ですか?
質問ほど、伝え方で大きく変わるものはありません。安斎勇樹さん・塩瀬隆之さんの著書『問いのデザイン』によれば、問いは、「思考と感情を刺激する」という性質を持ちます。うまく問いかけることができれば、相手の思考が一気に動き出し、感情もガラッと変わりうるのです。
こんな事例が紹介されています。動物園での子ども向けワークショップで、彼らが動物を積極的に観察したくなるような問いかけをあれこれ検討していたときのことです。その中でも明らかに参加した親子の対話が劇的に変わったのが、「ゾウの鼻くそはどこに溜まるの?」でした。
損する伝え方には、質問ではあるものの、一から十まで教えてもらおうという受け身の姿勢が強く出ています。そうではなく、仮説をぶつけることで相手の思考を刺激してこそ良い問いかけです。
漠然と問うのではなく「昨今の物価高でコスト削減は重要かと思いますが、特に気掛かりなコストは何でしょうか?」など、仮説をぶつけてみましょう。正しくても間違っていても、相手の返答がニーズや課題を的確に把握する手助けとなってくれますから。