テクノロジーの影響を過小評価してはいけない

このことを、チャットGPTを含むLLM(大規模言語モデル)に当てはめて考えると、200年後にはすべての人々が恩恵を受けることになるでしょう。つまり、今から200年経てば、AIに対する人間の見方はかなり異なったものになるでしょう。

このプロセスは決して自動的に起きているのではありません。パワーバランスの移行時に変化しました。

イアン・ブレマー、フランシス・フクヤマ、ニーアル・ファーガソン、ジョセフ・ナイ、ダロン・アセモグル、シーナ・アイエンガー、ジェイソン・ブレナン『民主主義の危機 AI・戦争・災害・パンデミック――世界の知性が語る 地球規模の未来予想』(朝日新書)

イギリスの例で言うと、最初は貴族的なトップダウンによって社会は動いていました。その場合、労働者には何の権利もありません。労働組合も禁じられ、5歳という幼い子どもが炭坑や工場で働かされました。

それから政治システムが民主主義的になってきて、実力主義の官僚制度や労働者の交渉力も増していった結果、労働組合も合法的になり、賃上げや他の権利を求めるようになったのです。

社会、政治、産業のいずれの分野においても歴史的にたどってきたこうした動きと同じようなことがこれからも見られるでしょう。

AIがさらに開発されると権力を持つのはアルゴリズムのパワーを味方につけている人です。

そうした点において、今までとはまったく異なる局面に入りつつあります。こうした傾向について「しょせんテクノロジーのできることなんて大したことはない」などと楽観的にとらえる人もいるようですが、その影響を過小評価すればいずれしっぺ返しをくらうことになるでしょう。

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