オートメーションは新しい仕事を生むことにもつながる

労働市場とオートメーションの関係について私は研究してきました。オートメーションがどんどん進むとどのような変化が労働市場に見られるのでしょうか。生産性や社会的な影響について、欧米の政策決定者や学術研究者がきちんと理解していない現状からすると、厳しいことを言うようですが、我々は“居眠り運転”をしていたと思います。

オートメーションは技術的変化の中でも特異なものです。人間を機械に置き換えるからです。生産性は向上しますが、それによって人間は解雇され、労働市場に悪影響を及ぼし、社会的反発を生じさせます。

しかし私の研究では、オートメーションは新しい仕事が生まれることにもつながります。あなたの周囲を見ても大多数の人が100年前には存在しなかった仕事をしているように、結局のところ、オートメーションは新しい仕事を作り出すことになるでしょう。

コスト削減のために導入され、労働市場の断絶を招いた

ただし、注意しなくてはならないのは、この20年を見ると、オートメーションは新しい仕事を作り出すのではなく、コスト削減のために導入されているのです。そこに重点を置いています。つまり、労働市場の断絶を生み出しています。多くの労働者に対して、賃金引き下げ、仕事消失という苦難を作り出しています。

失業疲れやストレス ビジネスマン
写真=iStock.com/SARINYAPINNGAM
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総合的にみると、オートメーションのような技術的変化は、世の中のためになる力にもなりますが、ますます格差を広げ、オートメーションをコントロールする人が支配的になります。社会の全体にあまねく恩恵をもたらすようになるには何十年もかかります。

産業革命の最初の80年、90年くらいの間に恩恵を受けたのは、資本家と実業家と少数の商売人だけで、労働者は恩恵を受けていませんでした。もっと時代が下れば労働者も恩恵を受けるようになりますが、それにしても90年というのは長すぎます。