燃え尽きそうになっていた自分が回復し、救われた体験
そのような経験から、リーダーは自己批判ではなく、自己肯定を大切にしなければいけないと考えるようになったのです。その後、自己肯定感とリーダーシップの関係について、博士課程で研究しました。
しかし、そこで驚くべき事実に出会います。それは、自己肯定感を重視しすぎると自己中心的になり周囲に悪影響を及ぼす、といった副作用やリスクがあるということです。その副作用ゆえに、この分野で先行する欧米では、すでに自己肯定感を高めるアプローチは下火になっていたのです。
こうした中、自己肯定感に代わるものとしてセルフ・コンパッションを知ったとき、「これだ!」と直観しました。それと同時に、「これは、私自身が必要としていることだ」と感じました。
当時、働きながら大学院で経営学を学んでいた私は、仕事と研究が忙しく、燃え尽きそうになっていた自分にセルフ・コンパッションのアプローチを取り入れました。そして自分が回復し、救われていく体験をしたのです。
自分へのやさしさが強さを育むのだと身をもって実感しました。「自分に何をさせることが、自分へのやさしさなのか」と自問する余裕も出てきました。
自己肯定感とセルフ・コンパッションの違いとは
セミナーや講演などでセルフ・コンパッションを紹介すると、やはり「セルフ・コンパッションと自己肯定感はどう違うのですか?」と聞かれることがよくあります。セルフ・コンパッションと自己肯定感との違いはどこにあるのでしょうか。
自己肯定感とは、「自分自身をどれくらいポジティブに評価しているか」という度合いです。たとえば、世界でもっとも使われている自己肯定感(英語ではセルフ・エスティームといいます)をはかるアンケートには、次のような項目が並びます。みなさんは、これらの項目にどれくらい同意できるでしょうか。
・私には、けっこう長所があると感じている
・私は、他の大半の人と同じくらいに物事がこなせる
・私は、自分のことを前向きに考えている
・私は、少なくとも他の人と同じくらい価値のある人間だと感じる
これらにおおよそ同意できた方は、自己肯定感が高いといえます。同意できなかった方は、自己肯定感が低いと言えます。一般的に、自己肯定感が高い人はメンタルが強く、幸せであり、健康であると言われています。
逆に、自己肯定感が低いままでは、不安を感じやすく、落ち込みがちです。リーダーも自己肯定感が高いほうが、成果を出します。とくに、組織やチームを大きく変えなければいけないような局面では、自己肯定感の高いリーダーが成果を出します。