体の潤いが不足すると「熱」が生まれる

一方、「陰」が弱い場合(これを「陰虚いんきょ」と言います)、体内は潤い不足で、「熱」を制御できない状態です。これを「虚熱きょねつ」と言います。そのため、舌が赤いのは前者と同じですが、さらに乾燥していたり、ひび割れていたりします。乾燥しているので、水分指標の目安でもある舌苔もほとんどない。いわば、「熱」を冷ますための冷却水が足りていない状態です。

詳しく話を聞いてみると、退社後にサウナに毎日通っていたり、お風呂に長時間入っていっぱい汗を流していたり、睡眠時間が足りていなかったりする。ほかにも、辛いものやスパイスを多く含む食事が多かったり、潤い成分である「陰」になる食べものが足りていなかったり、冷たいものや水分を必要以上に飲んでいたりも。

これらの生活習慣や食生活が「脾」の消化・吸収機能を低下させ、「陰」をつくる力の弱体化につながったことで、必要な潤いが足りなくなってしまったと考えられます。潤いが足りなければ「熱」は鎮静できないので、眠れなくなります。

また、「陰虚」は便秘にもなりやすいです。高齢になると水分を保持する能力が低下するので、高齢で眠れない方には「陰虚」であることがよく見られます。

写真=iStock.com/Alice Fox
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体の「熱」を鎮静させる食べ物を摂る

「陽」が強いという状態は、体に「実熱」が溜まっているということですから、まず、前述した「実熱」の溜まりやすい食事を続けている場合は、それをやめるのが手っ取り早い方法です。

一度に全部を断つことが難しいなら、少しずつ量を減らしましょう。「熱」を冷ます食材、「清熱せいねつ食材」で言うと、きゅうりや冬瓜、トマトなどが該当しますので、それらを摂取することも、体をクールダウンさせるにはおすすめです。また、ゴーヤやごぼう、緑茶など、五味の「苦」に属す食べものは、体内にこもった「熱」を鎮静させる効果があります。

食生活には心当たりがない場合、「熱」の原因は別にあります。怒りっぽいところはないか、ストレスフルな日々を送っていないか、自分の生活を点検してみてください。

また、夜でも蛍光灯を煌々とつけていたり、スマホに見入っていたりすると、光の影響で体は昼間だと勘違いし、「陽」に傾きます。オレンジ色の間接照明などを取り入れて、夕日が落ちていく風景をイメージしながら、夕方以降は意識的に部屋をだんだんと暗くしていきましょう。

夕飯をとるときは、レストランのようなちょっと暗い中で食べるのもおすすめです。