「大切なものを失うかも」という気にさせる

わかりやすいのが経済的メリット。交通の便がいい場所なら車は必要ありません。ほとんど乗っていないのに税金や駐車場などの維持費を払っている場合は、「乗っている回数や距離を考えたら、タクシーのほうが経済的」だと伝える手法です。

移動をしなくなって家にいる時間が増えるとボケる心配があるので、できれば代わりの移動手段を用意したほうがいいでしょう。

厄介なのはプライドの問題で運転をやめないパターンです。合理的に説得するのが難しいので、身内の人ほど拒否されやすく、険悪な関係になりかねません。こういう場合は“言い訳”を用意してあげます。

例えば、足が悪くて医者に通っている場合、「運転は控えてください」と医師から伝えてもらうとか。衰えているからではなく「病気で仕方なく運転をやめざるを得ない」という言い訳を用意するわけです。

ほかには孫から伝える手も。孫とドライブをした高齢者が「おじいちゃんの運転が怖かった」と孫に言われて免許を自主返納したという話を聞いたことがあります。「一緒に乗ったら孫を殺すかもしれない」「誰かを轢いたら交通刑務所に入って孫と会えなくなる」。大切なものを失うと感じたら、人はそれを守ろうとする生き物なのです。

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陰謀論にハマった人を説得するのはかなり難しい

【陰謀論にハマッた親を諭したい】

・ダメな言い方
それはただの陰謀論だよ

・うまい言い方
こうした事実についてはどう思う?

そこそこ頭がいい人のほうが陰謀論にハマる傾向がある――そんな印象が僕のなかにはあります。というのも、陰謀論にハマる人というのは、「テレビのニュースや新聞よりも自分の調査能力のほうが優れている」と思い込むくらいの自尊心があったりするので、「自分が信じている説のほうが正しい」と思い込んだりするのですね。

しかも、わりと“いい人”のほうが、陰謀論に染まりやすかったりします。いい人は、「人間は善意で動く」と信じているからです。しかし、正義の反対が常に悪というわけではなく、別の正義が存在していることもあります。

それぞれに自分の正義だと考える論理があって、見方や立場を変えれば正しいと思える。だから陰謀論にハマった人を諭すのは、かなり難しいのが現実だと思います。