「漢字一字の名前」は訓読みから音読みに変化

特に昭和24年からランキングにみられるまことは、32年から53年までの長きにわたりほぼ連年首位を占め、まさに戦後を代表する男性名であった(図表2)。

ただし昭和35年に一位がひろしとなり、浩一こういち浩二こうじ浩之ひろゆきがランキングに入っている。これは同年に誕生した今上天皇のご称号「浩宮ひろのみや」にちなむ一時的ブームであるが、以降40年代になると和彦かずひこ達也たつや哲也てつや直樹なおき英樹ひでき健一けんいち健太けんた雄太ゆうた、など漢字二字で主に三音節の名が漢字一字三音節と相並び、やがて56年頃からは二字が多数派となっていく。

漢字一字も、りようしょうなど音読みの方が多くなる。なお昭和54~61年のランキング首位は大輔だいすけ、62年は達也で、63年から平成9年までは翔太がほぼ一位を占めた(10年間で3回首位を譲った年がある)。

「ハルト」の書き方は231通りも存在している

その後も男性名の三音節人気は変わらない観もあるが、平成9年頃からはりくれんなど、男性名としてあまりなかった二音節がランキングの常連に入ってくる。平成10年から15年は大輝や翔、駿が首位で、その間、拓海たくみ海斗かいと颯太そうたなど、音声上は従来の男性名でも、あまり使わなかった漢字表記がランキングに入ってくる。

16年からは蓮や大翔はるとが首位を占めることが多く、このほかにも悠真ゆうま悠人ゆうと陽翔はるとあおいみなとりつなぎなどが上位で4年に至っている。

平成12年、つまり2000年代前後から、女性名と同様に漢字の字義や音訓を逸脱・無視した宛字の手法が顕著になる。

明治安田生命HP「名前ランキング」によると、令和4年の読みでのランキング1位「ハルト」には、陽翔・陽仁・春斗・大翔・波瑠人・悠叶・遥士などをはじめ、実に231通りもの表記が挙げられているし、同じく4位の「リク」も陸、凌久、凌空、璃空、睦、陸玖、稜久、凛空、莉久、りく、睦空、吏玖、理玖、理功、莉空、理久、理巧、陸空、凌玖、琳久、莉玖、凜空、涼玖、椋久、利來、李空、李琥、理来、璃久、琉空、凜久、颯、32通りあるという。

また「大翔」と書いてハルト・ヒロト・タイガ・ヤマト・タイシ・ダイト・タイショウ・タイト・マサト・ツバサ・オウカ・ソラ・タイゾウ・ハルマ・ダイキ・ダイショウ・ヒロキ・タイセイなどと読ませ、「蒼」もアオイ・ソウ・アオ・ソラなどの読みが行われているらしい。平成の半ば頃まで考えられなかった状況が、男性名でも続々と生まれている。