本当に部下には褒めるところがないのか

ただ、コンサルティングの現場でこれらのことをお伝えすると、次のような反論が返ってくることがあります。

「褒めたいのはやまやまですよ。でも部下は褒めるようなことをしてないんだから、褒めるなんて無理です」

中には「うちの部下のどこを褒めろというんですか! 褒めるところなんかないです!」と感情的に反論されたこともありました。

でも、本当に部下には褒めるところがないのでしょうか。

人はどのようなアンテナを張って物事を見るかで、目につくものが変わります。

一般的に上司は「どこかミスや漏れはないか、不十分な点はないか」というアンテナを張りながら部下の仕事ぶりを見ます。

そうするとミスや漏れ、不十分な点などの悪いところばかりが目につき、「そんな部下のどこを褒めろというんだ!」と反論したくなるわけです。

そのため、そういった反論をされた際は「どこか褒めるところはないかというアンテナも張りながら、部下の仕事ぶりを見ていますか?」と質問します。すると、ほとんどの方がそのアンテナは張っていないと答えます。

そこで「では今後はそのアンテナも張りながら、部下の仕事ぶりを見るようにしてください」と宿題を出します。

そして次にお会いしたとき、「部下の褒めるところが見当たらないですか?」と聞くと「まぁ、なくはないですね」「見方を変えれば見つかるもんですね」と話してくれます。

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部下の良いところに気付けるように

7年前、ある不動産会社の社長から、離職率が高いとの相談を受けました。

その社長は部下への当たりがかなりきつく、部下に対する意識を根本的に改めてもらう必要がありました。そこで「褒めるところはないか」のアンテナを張ることを継続的に指導しました。

それから7年が経ち、今では社員が辞めなくなったため、社員の平均勤続年数が毎年上がり続けています。その変化について、社長はこう話されます。

「昔は部下の悪いところばかり目についていたので、腹が立ってきつく当たってました。でも『褒めるところはないか』のアンテナを張るのをずっと続けてたら、部下の良いところにどんどん気付けるようになったんです。

良いところに気付いたら言葉に出すように藤田さんに言われてたので、実際、言葉に出すようにしたら、かなり部下を褒めるようになりました。その頃から自然と社員に感謝の気持ちで接するようになりました。それからですね。社員が辞めなくなったのは」

このように、部下にきつく当たっていた人でも、「褒めるところはないか」のアンテナを張り続けると、部下の良いところに気付けるようになり、そして部下を褒めることができるようになるのです。

その場合、部下を褒めることができない原因は、部下に褒めるところがないことではなく、上司が部下の褒めるところに気付けていないことにあるのです。

そのため、部下の褒めるところが見当たらない人は、「褒めるところはないか」のアンテナを継続的に張るようにしてみてください。

それは部下への関わり方に大きな変化をもたらします。