「政治のエンタメ化」はなにも生まない

安倍政権下で自民は議員レベルに限っていえば右傾化したが、立憲は共産と組むことに躊躇ちゅうちょしなくなり左傾化で対抗する戦略をとった。安保法制反対で熱く、盛り上がった政治運動をリードしたSEALDsも望んでいたような野党共闘に踏み切った。

しかし、SNSにこそ現れないが、日々の生活に向き合っている人々からはかけ離れていき、ぽっかり空いた中道は改革を旗印に据えた維新に取られていく……。これがデータでも説明ができる現実の政治だ。

加えて、これはデータでは裏付けられないあくまで取材現場の実感にすぎないが、ぽっかり空いてしまった中道の不在はポピュリストの土壌にもなったようにも思えてならない。政治を身近なものにしたいとか、政治をエンタメ化したいというのは昨今、数字や注目を集めるポピュリストたちの決まり文句になっていた。

そんな彼らが意識的か無意識かはわからないが票のターゲットとして狙っていたのは、左右の対立軸についていけない人々だったのではないかと思う。本来、政治は壮大な見世物とは遠いものだ。関心を高めるようなわかりやすい構図は対立軸を突き詰めた結果として辿り着くものであって、プロレスのような意識的な仕掛けの先に生み出されるものではない。

ポピュリズムの波が吹き荒れたヨーロッパで、ポピュリストがもたらしたのはガバナンスの機能不全だった。現代社会において極論を用いて政権をとったところで、生み出せるものが多くないのは当然のことだろう。

自民と立憲がともに似たようなトップを選んで中道に寄せていく選択をしたことで、より実直な政治が戻ってくるのではないかと期待したのだが、果たしてどうなるか。結論を出すのはまだ早いが、長かった安倍時代の終わりを前にして、メディアも含めてアベか反アベかのような粗雑な二項対立、粗雑な論点設定で語られない政治の復権はどんな形であれ必要だ。そこは強調しておきたい。

新内閣の発足に伴い、首相官邸の階段で記念撮影をする石破内閣(写真=内閣官房内閣広報室/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons
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