4階に住む被害者が2階の住人にクレーム

マツダさんは取り調べで、こう供述しています。「ある日、部屋にいたら大音量の音楽が流れてきた。音がする部屋へ行き、被告人に言ったら音を下げてくれた。また別の日にはドスンドスンとすごい音がして、またもや被告人の部屋からだった。そのときも静かにしてほしいと言いに行った。

そんなある日、自分の顔写真と名前が書かれたチラシがマンション1階や近くの商店街に貼り出されていた。チラシにはまったく身に覚えのないことが書かれていた。被告人の部屋に行って確認すると『オレじゃない』と被告人がとぼけたので、言い合いになった。すると、私のアゴを殴ってきたので、投げ飛ばしてから警察に通報した」

近所の騒音というと、管理人や大家さんに伝えることでやんわりクレームをつけるというのがよくあるパターンだと思いますが、マツダさんは直接文句を言いに行くタイプだったようです。

一方の被告人は、取り調べで次のように供述しています。「生活音のことで被害男性から何度も苦情を言われ、何回もふっかけられていた。私だけではなく、ほかの住人も注意を受けていて、頭にきていた」

被告人はマツダさんから日常的に文句を言われたことを「ふっかけられていた」と供述していることから、心の中では「そんなにうるさくしていないはず。普通の生活音の範疇」だと思っていたのでしょう。

ここで法廷に戻ります。弁護人から次のような被告人質問が行われました。

弁護人「自分のことをどんな性格だと思っていますか?」
被告人「気が弱いです」
弁護人「今まで誰かに言いがかりをつけたことは?」
被告人「ないです」
弁護人「文句を言われたら、服従する性格だと?」
被告人「はい……。歯向かったりしたのは、このときが初めてです」

被告人質問でのやりとりを見た印象としては、声も小さく、気弱な感じでした。体も細く、人を殴ったという起訴状の内容とはイメージが異なります。

弁護人「マツダさんと初めて会ったきっかけは何ですか?」
被告人「音楽がうるさいと部屋に怒鳴り込んできたのがきっかけで、すぐに謝りました」
弁護人「大音量で音楽を聴いていたのですか?」
被告人「小型スピーカーは持っていますが、ステレオはないので、そんなに大きい音だったかなとは思いました」
弁護人「マツダさんはマンションの同じ階に住んでるのですか?」
被告人「いや。私が2階で、マツダが4階です」

騒音トラブルというと、隣の部屋や上下階同士で起きるものだと思っていましたが、この2人は間に1フロア挟んでいたのです。2階と4階の騒音トラブルというのは珍しい話です。