父親からお金をもらわないと生活ができない母を見て育ったNさん

Nさんは、現在40代前半。都内で一人暮らしをしている。福岡出身で、父親は典型的な九州男児だった。母親の出す毎日のご飯に対しても「美味しい」「ありがとう」という言葉は今まで一度も聞いたことがない。

母親は専業主婦で、父親からお金をもらわないと生活ができない。家事も育児もあんなに大変なのに、ひとりでこなしていかなければならず、それ以外の選択肢がない姿を目の当たりにするのが、ものすごく嫌だったそうだ。そんな母の姿を見て、何か欲しいものがあったときにすぐに自分のお金で買えるよう、仕事を一生懸命するようになったとNさん自身は考察している。

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父親が母親に気を遣うこともなく、常に機嫌が悪かった。Nさんは幼少期から父親の機嫌を伺っていたからこそ、大人になった今でも他者との関係においても誰かの機嫌を伺い、自分らしく振る舞えていないことに気がついた。だからこそ、東京に出たい、一人になりたいという気持ちを一層強く持つようになったそうだ。

稼ぎのいい結婚相手より自立した生活が先

また、Nさんには、自分の生まれ育った地方都市にいい思い出が全くない。周囲には「自分で働いて自立した生活を送るよりも、結婚して稼ぎのいい旦那さんに養ってもらうのが幸せ」「早く結婚して、生活を安定させたほうが幸せ」だと考えている女性が多く、息苦しさを感じていた。そんな地元の雰囲気が嫌で、Nさんは大学進学をきっかけに東京で生活をはじめることとなった。いまもその選択をしてよかったと感じているという。

一方で、地元の同級生は結婚して子どもを育てている人が多い。

やはり結婚観や子どもに対する価値観は、生育環境が大きく由来するのだと思う。Nさんは子どもの頃から、「大人になったら結婚して子どもを産むんだろう」と考えたことはなかった。子どもは好きだが、産んで育てるというイメージが持てなかったのだという。どちらかといえば、人生を確立させるために仕事をしたいと考えていた。稼ぎのいい旦那さんを見つけるよりも、自立した生活ができるようになるほうが先だという意識をずっと持っていた。

Nさんは今も、仕事中心の生活のほうが自分には合っていると感じるという。社会人になって働き始めてからも、仕事で忙しく過ごすほうが好きだと思っているそうだ。