多数のプレイヤーが過度な陶酔感に浸っていた

それまでは例えば、年収400万円のOLが物件価格2億円程度の融資を、経費まで含めて全額借り入れ、その収益をもってOLを引退するといった現象が起きていたのです。あまりの融資の緩さに物件価格が高騰し、言い換えれば利回りが低下し、こうした行動様式が取れなくなりつつありました。

しかし金融機関全般の融資は相変わらずユルユルであったため、後発組のサラリーマン投資家が「リタイヤ」や「セミリタイヤ」、近年の言い方だと「FIRE」を目指して、無理をして億単位の、地方の高経年マンションを一棟買いするなど、その持続可能性が危ぶまれる状態でした。

またマンションデベロッパー界隈では「お化け物件」なるものが登場。これはカンタンにいえば、用地を仕込んで賃貸マンションを建設し、売却すると、BtoBないしはBtoCにおいてものすごく高く売れ、本業であるマイホームとしてのマンションデベロップ事業の数倍の売上げ・利益を計上できる、といったものです。

大企業などが株式市場に加え、社債やコマーシャルペーパー(CP)で資金調達できるようになって久しく、金融機関としては貸出先を求め不動産融資に積極的だったのです。

金利上昇はもちろんのこと、融資姿勢が一定程度以上に引き締められれば不動産価格に下落圧力が働くのは自明です。背伸びに背伸びを重ねてきたところではじけたのがあのリーマン・ショックでした。それまでは株式市場も不動産市場も表向きには絶好調でしたが、私には一種のユーフォリア(過度な幸福感、陶酔感)に、多数のプレイヤーが浸っているように映りました。

お通夜の不動産市場で起こった不動産投資ブーム

2000年11月、ロバート・キヨサキ著『金持ち父さん 貧乏父さん』(筑摩書房)が日本で刊行されました。

ロバート・キヨサキの主張を一言でいえば「キャッシュフローを生む資産に投資せよ」といったもので、その代表格として不動産投資が挙げられており、同書は日本のみならず世界中でベストセラーになりつつありました。

「投資用不動産は一部富裕層や地主のものではなく、コモディティ化(一般化)する。日本に不動産投資ブームが来る」

そう確信した筆者は、今では数多く開催されている、サラリーマン向けの「不動産投資勉強会」を国内で初めてスタートさせました。しかしこの当時は大手証券会社の山一證券が倒産した「山一ショック」をはじめとする各種経済ショックからなかなか立ち直れず、2000年には米国発のITバブルがはじけたあおりも受けて、日本経済はもちろん、株式市場も不動産市場もお通夜のような状況だったのです。