なぜ、専門家は肝心な時に間違えるのか

そして実際、個人の不動産投資ブームがやってきます。この時から従来型の伝統的な「土地持ちの地主層」とは別に、いわゆる「サラリーマン投資家」が登場。金融機関で調達した低金利の融資を利用して、より高利回りの収益が期待できる不動産を運用し、利益を得るといった手法が流行します。資産規模に応じて、会社員としての給与とは別の副収入を得ることができるわけです。

不動産市場が沈む中、資産10億円以上の「メガ大家」、さらには資産100億円以上の「ギガ大家」が多数生まれたのです。

ご覧いただいたように、「世論」というか「世の中の風潮」というのは、往々にして間違えるものです。それはなぜか。その正体が「マス」だからです。「大多数の意見」というのはしばしば大外しするのです。

それでは「大多数の意見」とは、具体的にどのように創られるのでしょうか。ひとつには「専門家のワナ」があります。「専門家」というものは往々にして「肝心な時に間違える」ものです。

例えば専門家が株価の予想をする場合には、これまでの市場の流れを踏まえるのはもちろん、それと同等かそれ以上に「他の専門家はどう考えているか」が大事であったりします。

株価ボードを見るスーツ姿の男性
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「日経平均4万円超え」を予想した専門家はいたか

万が一でも自分が見落としや勘違いをし、的外れなことを言って他の専門家に笑われたくないからです。上手に空気を読んだうえで、専門家としておかしくない、穏当な発言をしたいのです。それが各業界・界隈で生きていく知恵とも言えるでしょう。

あるいは所属している組織の意向もあります。実際、2024年早々に日経平均株価が4万円を超えると予想した専門家は何人、何パーセントいたでしょうか? 少なくとも私が知る限りほぼ皆無だったと思います。

年末年始に発行された経済系の週刊誌に掲載された「2024年株価大予測!」のような特集を読み返してみてください。株式市場の専門家のコンセンサスはだいたい3万円前半~中盤でした。ところがその直後に日経平均は4万円を突破しています。

そうした記事を参考にして、多くの読者は投資の可否や銘柄選択をするわけです。もちろんそのような行動様式は、市場が安定して定常状態にある時、つまり

「一定のレンジで上下動している」
「安定して上昇基調にある」
「長らく下降局面にある」

などの際には、文字通り「穏当な意見」であり、おおむね正解と言えます。1990年バブル崩壊以降は長いデフレが続きましたので、その前提で考えておけば大きく外れはしませんでした。