補助金をアテにする自治体で家を買うとどうなるか
自治体の主要財源は「住民税」と「固定資産税」です。金融リセット後の世界では、中央から入ってくる「地方交付税交付金」やらいろんな名目の補助金をあてにした自治体経営はしない、できない前提で世の中が動きそうだと考えておいた方がいいでしょう。
こうした将来は都市計画から外れそうな立地にも、現在では新築住宅が造られ、個人の損得勘定で売れてしまうという、経済用語でいう典型的な「合成の誤謬」が起きています。「合成の誤謬」とはかんたんに言えば「個人やミクロの視点では合理的な行動も、全体やマクロの世界では、必ずしも好ましくない結果が生じてしまうこと」です。
新築住宅の「合成の誤謬」を具体的に言えばこういうことです。
「新築を売りやすい制度設計のもと、事業者が新築を提供」
「新築を買いやすい税制や低金利のもと、消費者が新築住宅を購入」
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「しかしこの時、自治体経営の観点はなく野放図に建設されるため、自治体の経営効率が悪化」
市民を待ち受ける「ゆでガエルのワナ」とは
詳しくは第2章で解説しますが、このような構図の中で新築住宅の建設が進めば、次のような取り返しのつかない事態になりかねません。
「自治体の経営を持続するには税金を上げるか行政サービスを減らすしかないが、前者は現実的にはなかなか難しいため、後者を選択するしかない」
「こうした事態はじわじわと進行するため、市民も行政もゆでガエルのワナにはまり、気づいた時には取り返しがつかないくらい自治体が衰退している」
ゆでガエルのワナとは「カエルは、いきなり熱湯に入れると驚いて逃げ出すが、常温の水に入れて徐々に水温を上げていくと逃げ出すタイミングを失い、最後には死んでしまう」という意味で、「ゆっくりと進む環境変化に慣れてしまい、気づいたころには取り返しのつかないことになっている」といった事態の比喩です。
本来は、個人の合理的な行動がマクロ(全体)にうまく働くよう制度設計するのが政治や行政の仕事なはずですが、ありとあらゆるできない理由を挙げて、あるいは既得権益にしがみつくことで、「壮大な無駄」を生み出し、全体として歪みが生じているのです。