寺に海苔を持参して祈願する

ベルクに私が強く興味を持ったのはコロナ禍の2020年です。同年4月に緊急事態宣言が出て世の中がパニック状態になっていた時です。この時に小売業や飲食店などは3密を避けるために、営業時間の短縮や来店を制限するよう、チラシやポスターで告知していました。

しかしほぼ同じ時期に、ベルクは下記画像右側のようなチラシを作っていたのです。消費者のために佐野厄除け大師でコロナの終息を祈願する商品部社員の写真が掲載されたチラシです。

たまたま私はこれを手にして、正直驚きました。同時にベルクにとても興味を持ちました。お客のために祈るスタンスはステキだなあと思ったのです。

筆者撮影
茨城の食品スーパー「カスミ」のチラシと同時期に配布されていた「ベルク」のチラシ

このベルクの佐野厄除け大師の祈願は、コロナ禍だけでなく、恵方巻を販売する際にも行っています。毎年、お寺に恵方巻で使う海苔を持参して祈願しているのです。

こんな発想、普通のスーパーではなかなか見られません。このベルクというスーパーは「他の会社ではやらないことをやる」と決めている会社なのだろうと私は思いました。

「レジ袋が1枚5円もするわけない」

ベルクではレジ袋がいまだに無料です。今や世の中の小売店ではレジ袋は「有料」が当たり前になっています。しかしベルクではレジ袋はバイオマス素材25%配合のレジ袋へ変更することで無料にしています。さらにはレジ袋が不要の場合は、「お買物袋ご辞退カード」をレジで渡すと会計から2円引いてくれます。

なぜ今も無料を続けているのか、理由は「レジ袋が1枚5円もするわけない」(原島一誠社長、「ツギノジダイ」2022年9月7日『「バケツの底がぬけていた」拡大路線に危機感 ベルク4代目の人材戦略』)というもの。5円ももらったらレジ袋で儲かってしまう。そんなことはしたくないということで今も無料を続けているのです。なかなか変わったスーパーです。

ベルク4代目の社長、原島一誠さんが社長に就任されたのが2020年です。ベルクが次々とおもしろい企画を打ち出し、特に若者をターゲットにした企画を打ち始めたのはこの頃からです。

原島社長は「顧客の先細り」というローカルスーパー特有の課題に直面し、危機感を持っていました。主婦のイメージが強いスーパーですが、実際には共働きの増加で専業主婦世帯は減っています。主婦層だけに支持されてもスーパーに未来はない。そう考えたのです。