小規模な会社ならではの柔軟な取り組み
以上のようにプラグは、デザインAIによって競争戦略上の独自のポジションを獲得している。戦略計画的な行動に長けた会社という印象を受けるかもしれないが、じつはこの方向性は「実際に走りながら見えてきたもの」だという。
プラグでは2015年から、市場で好まれるパッケージ・デザインとは何かを調べるために、従来型の市場調査を自社で始めた。そのデータが数百万人分以上蓄積された2017年、ディープ・ラーニングという新技術を知ったことをきっかけに、パッケージ・デザインの評価AIの開発を試みる社内の自主研究会が立ち上がった。この時点では、会社としてのAIについての知識は十分ではなく、この研究が自社に何をもたらすかもはっきりしていない状態だったという。
その後は、勉強しては試行するという形で評価AIの開発を進めたが、なかなか精度が上がらなかった。そこで東京大学の山崎研究室に助けを求め、指導を受けた。同研究室に開発を依頼できるほどの予算はなかったため、構築したAIを見てもらっては宿題を持ち帰るというやり方で、その後の開発は進んだ。柔軟に新しいことに取り組める、小さな会社の利点がここで生きた。
その後はアスリートがコンマ1秒ずつ記録を高めていくように、一歩一歩精度を高めていくことができた。このディープ・ラーニングの開発での体験が、次の生成AIの活用にもつながっていく。走りながら考えることで、プラグは期せずして国内パッケージ・デザインへのAI導入のフロントランナーとなっていったのである。