行列に並ぶと、別の体験の可能性を失う

冒頭で述べた「俺のイタリアン」の行列体験を思い返すと、当時は「行列に並ぶ」こともレジャーであったが、今日は「タイパ」の時代である。

週末の午後は貴重な時間である。あれやこれやと、いろいろなことを楽しみたい。一度は行ってみたい話題のラーメン店で食事をすることがプラス390円で可能になり、その後に見ておきたい映画の鑑賞をしたり、買い物をするという具合に、計画的に行動することができる。

今日、行列に並ぶということはもう一つの可能性を失うことであることを、多くの人が認識をしている。ファストパスは、このような消費者の今日的な価値観によって歓迎されているのであろう。

飲食店から見た有料ファストパスのメリット

現状「ファストパス」の手数料は390円から500円が主流である。現状最も高い金額は2000円だという。

TableCheck広報の望月実香子さんによると、予約を有料化することは、店側に「お金」の面以外にもメリットがあるという。それは、概ね以下のようになる。

まず、優先案内の手数料を設定することで、店は商品価格以上の収益を上げることができる。食材や人件費の高騰が利益を圧迫していながら値上げが難しい昨今、この手数料は店にとって貴重な収入源になる。これによって、純利益が上乗せされ、より良い食材を使用したり、従業員の待遇改善につなげたりすることができる。

次に、飲食店は、予約した客が現れない「ノーショー」の被害を回避できる。整理券制にしてもゲストがその指定した時間に来ないということもある。ファストパスでは事前にクレジットカード情報を入力してもらうため、キャンセル料の請求が可能となり、予約客が現れないことによる損失を考えなくてよい。