目立ちたがり屋だった幼少期の苦い経験

子どものころの私は(今もそうかもしれませんが)、お調子者でした。ちょっとでも成功したり褒められたりすると、つい調子づいてしまう。それに加えて、目立ちたがり屋のところもありました。

だから授業参観の日などは、親にいいところを見せようと張り切って、先生が「この問題、わかる人?」と言うと「はい! はい!」とすぐに挙手していました。

声が大きいほうだったこともあって「はい、平井くん」と当てられるのですが、そもそも目立ちたくて手を挙げただけなので、問題を理解していない。当然、答えられるはずもなく、当てられてから「ええと、何でしたっけ?」と聞き返す始末でした。

それを見ていた両親は赤面しきり。家に帰ると、「人の話を聞いてもいないのに目立とうとするやつがどこにいるんだ」とこっぴどく叱られるわけです。やれやれですね。

私の目立ちたがり屋の性格は、仕切りたがり屋にも通じていました。たとえば、理科の授業でグループに分かれて実験をするというときも、進んでみんなを仕切ろうとします。

ところが先の例と同様、そもそも先生の話を聞いていないので、実験の内容を理解していません。だから、「はい、平井くんのグループではどういう結果が出ましたか」と聞かれても「いや、まだできていません。……ていうか、何をするんでしたっけ」となる。

当時の自分を振り返ると、何かに没頭すると自分の世界に入ってしまい、周囲の声が耳に入らなくなってしまっていたのだと思います。

しかし、それでは人と協力して物事を遂行することなどできません。上の人からの指示を聞いたり、周りの人たちの意見を取り入れたりしなくては、何も進められない。しかし子ども時代の私には、まだそんなことはわかりません。

“成長のタイプ”を知れば大成につながる

ただ、さんざん両親や先生に注意されたり叱られたりしていたので、幼いながらも、徐々に「人の話を聞くのは大事なことらしい」と察知します。

そこであるとき、試しに目立ちたがり屋、仕切りたがり屋の自分をぐっと抑えて、「話を真面目に聞く姿勢」で授業に臨んでみたのです。

すると先生から、「平井くん、今日は話を聞いていますね」と見事に指摘されました。やはり人は、ちゃんとほかの人の姿を見ている。それに「話を聞こう」という姿勢は、何もわざわざ自分からアピールしなくても相手に伝わるものなのだと学びました。

もうおわかりでしょうか。私は、もともと人の話を聞かない子だった。それをさんざん注意され、克服しようと思ったことで、ようやく誰かと協力して物事を遂行する最低限の能力――「人の話を聞き、コミュニケーションを取る」という能力を身につけました。

私の場合は、自信満々で得意なことを先鋭化するよりも、至らない部分を修正するほうが向いている。そうなったのは、おそらく幼少期に、短所を克服する必要性に迫られた経験があるからなのです。

平井一夫『仕事を人生の目的にするな』(SBクリエイティブ)

念を押しておきますが、「私は失敗から学び、苦手を克服するほうが向いている」という話であって、それが絶対に正しいという話ではありません。ぜひあなたも、これを機にご自身を振り返ってみてください。

私とは逆の人もたくさんいると思います。ネガティブな部分に着目すると、感情や思考までネガティブになってしまう。そのため、成功から学び、得意を伸ばして自分を磨いていくほうが向いている人もいるでしょう。

社会人として大成していくためにも、やはり自分を知ることが先決です。

あなたはどういう成長の仕方をするタイプなのか。できるだけ客観的に見て、失敗から学び、苦手を克服するタイプか、それとも成功から学び、得意を伸ばすタイプなのかを探ってみてください。

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