僕は今まで、結果を出すためにやり尽くしたと言える1日1日を、誰よりも大事に過ごしてきた自信を持ってます 『大谷翔平 野球翔年I』
「怠惰であることには隠された無意識の駆け引きがあることが分かる」は心理学者アルフレッド・アドラーの言葉です。アドラーによると、怠惰な子どもたちは、綱渡りをする人に似ているといいます。
ロープの下には網が張ってあり、たとえ落ちたとしても衝撃は柔らかなものになります。
努力をしたのに成果が上がらない時、普通は努力不足や能力不足に向き合うことになりますが、怠惰な人は「もっと一生懸命にやれば成果は上がったはずだ」という逃げ道をつくることができます。
「全力で頑張ったけれどダメだった」は自分の限界や能力のなさを思い知らされることになるのに対し、「中途半端な努力で結果が出なかった」人は、「本気でやればもっとできる」と言い訳ができるし、能力のなさと向き合う必要もありません。
全力を尽くさないこと、それは最初から失敗の言い訳を用意することであり、自分の弱さを隠すことでもあるのです。気分的には「楽」かもしれませんが、こうした人が圧倒的な成果を手にすることは決してありません。
「努力は必ず報われる。もし報われない努力があるのなら、それはまだ努力とは呼べない」は王貞治の言葉です。成功には努力が欠かせないことは誰しも知っていますが、多くの人はそこそこの努力で「もう十分にやった」と納得してしまいます。しかし、それではダメで、「成果が出るまで」やり尽くして初めて本当の努力と呼べるのです。
大谷翔平の二刀流への挑戦を提案し、支え続けたのは日本ハムファイターズの監督・栗山英樹ですが、栗山が「大谷ならできる」と思えた理由の一つは大谷が子ども時代から実践してきた「自分がこうだと決めたら最後までやり続ける強さと忍耐力」だといいます。
大谷は高校時代も、プロに入ってからも「こうするんだ」と本気になったら、できるまで必ず「やり切る」といいますが、だからこそ栗山は大谷に二刀流ができると信じたし、大谷自身も二刀流を形にすることができたのです。大谷はこう言い切っています。
「僕は今まで、結果を出すためにやり尽くしたと言える1日1日を、誰よりも大事に過ごしてきた自信を持ってます」
「やる」ことはできても、最後まで「やり切る」ことが出来る人は案外少ないし、ましてや大谷のように何年にも渡って「やり続ける」ことのできる人はほとんどいません。大谷の「やり切る」力こそがメジャーリーグでの成功を可能にしたのです。
ワンポイント:本当に成功したいなら「言い訳」ができないほどの努力を続ける。
(出典書籍)
●『道ひらく、海わたる 大谷翔平の素顔』(佐々木亨著、扶桑社文庫)
●『Number』 1094・1095 (文藝春秋)
●『大谷翔平 野球翔年I 日本編2013―2018』(石田雄太著、文春文庫)