供養する設備を持っている施設は対応できるが…

しかし、身元保証人らがいなくとも常時受け入れてくれる介護施設を、かつて訪ねたことがある。

共通していたのがいずれも仏教もしくはキリスト教などの宗教法人系の介護施設であるということだった。また、それらの施設長の話によれば「身寄りがいない」「頼る人がいない」などの高齢者の受け入れ先として、50年以上も福祉・介護事業を担っているとも。

印象的だったのが、教会や寺院などが隣接され、墓地も敷地内にあり無縁仏の供養ができるようになっていたことだ。宗教系法人の介護施設の多くは、高齢者のケアから埋葬まで人生の全てを締めくくる福祉支援を理念として掲げているため、身元保証人がいるか否かで受け入れを判断することはないようであった。

その他にも要介護者の病状が悪化したら、延命治療の有無や治療方針などを身元保証人らにも判断してもらうことになる。特に、急変して本人の意識がなくなれば「人工呼吸器装着?」、口から物が食べられずお腹にチューブを通して栄養補給する「胃瘻いろう手術は?」などは、医療機関側が身元保証人らにこれらの判断を仰ぐことになる。いってみれば病院や介護施設では、終末期医療(ターミナルケア)の判断等の責任を負いたくないのである。

些細な判断でも身元保証人がいないと負担が大きい

まれに尊厳死などの「リビング・ウィル」を宣言している患者もいるが、大部分の高齢者は、病気になる前から延命治療の有無について意思表示はしていない。だから、いざそうなった時には、医療機関は身元保証人に判断してもらうのだ。

在宅介護現場においても、ケアマネジャーやヘルパー、デイサービス職員らが、些細ささいなことでも判断を要する場面があり、身元保証人もしくは緊急連絡先となる人物がいるか否かで業務負担は大きく違うという。たとえば、援助者が買い物支援を行う際に、高齢者本人が購入したい物を全て受け入れるのに躊躇ちゅうちょする場面がある。

具体的には独居高齢者に高価な買い物を頼まれる場合、本当に購入していいのか、認知症ではないが高齢者が後先を考えずに買い物をしていないかなど、援助者と高齢者間のみのやりとりでは微妙に不安を抱く際、身元保証人に確認をとることで安心して本人の要望に応えることができる。

また、些細な理由で高齢者が通院先のクリニック(診療所)を変えたいと相談を受けたケアマネジャーが、近隣の別のクリニックを探すにも身元保証人の確認を得ることで気持ちのうえでは楽になるようだ。

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