あなたはGoogleに投資できたか?

インサイトが万人に理解されるものではないことを示す例として、有名な話だがGoogleの話を紹介しよう。

Googleは創業まもなく、VCであるジョン・ドーアへ資金調達に向けたプレゼンをした。プレゼン資料の17枚のスライドのうち数字を含むものは2枚で、それらからビジネスモデルは見えてこない。

さらにGoogleは検索エンジンとして18番目の参入者である上、創業者は事業経験のない学生である。

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そのような中、創業者の1人であるラリー・ペイジが力説したのは「いかに先行者の検索エンジンの質が悪く、どのようにすればそれを改善できるのか」という一点にあった。

結果的にGoogleは投資を受けることに成功するわけだが、このことからわかるのは、投資はこの先行者インサイトが正しいという考えに賭けられた、ということになる。

これに投資をするにはいくつかの条件が必要となる。

検索エンジンの覇者が巨大な価値を持つと判断できること。

検索エンジンを制覇するには精度と速度が決定的に重要であり、Googleが語る方法であればそれが実現されると判断できること。

創業者たちに「勝ち抜く意思」と「能力」があると判断できること。

「検索エンジンて儲かるの?」「確かに君のエンジンは良さそうだけど、すぐに真似されるんじゃないの?」という疑問を抱くようでは、投資は実行できなかったであろう。

「売上がどの程度まで行くか?」という質問に「100億ドル」

インサイトは誰もが理解できるものではないので、売上実績がない中で資金調達を模索する場合、投資家獲得のために数十社を回ることが普通である。資金調達を受けるGoogle側にしても、そのような投資家とのコミュニケーションに時間をかけることは無駄なのだ。

ちなみにこの時点では「検索エンジンの覇者が巨大な価値を持つこと」も明らかではなかった。Yahoo!は検索エンジンなどアウトソースしていればよいと考えていたのだ。

また、技術的な知見がなければGoogleが語る方法が妥当であるか否かを判断することは難しかっただろう。

先の条件の最後に挙げた「創業者の勝ち抜く意思」を評価するには、人間に対する洞察能力が求められる。当時のプレゼンテーションで「売上がどの程度まで行くか?」という質問を受けたラリー・ペイジは、「100億ドル」と答えたようだ(根拠はない)。

勿論これだけで勝ち抜く意思があると評価することはできないが、企業を成功させるという大きな野心を持っていたことは間違いないだろう。ときに投資家はビジネスの内容ではなく、創業者の適正だけを見て投資をすることもある。

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