Xとマスク氏への信頼は揺らいでいる

マスク氏が国家権力との対立を示すのはブラジルでだけではない。

Xのサービスを巡って対立はすでに欧州委員会、オーストラリア、イギリス、インド、トルコなど多地域との間に発生している。

欧州委員会は、パレスチナ情勢を巡る偽情報の拡散防止対策が不十分として2023年にXを調査。ヨーロッパのデジタルサービス法に違反しているとする暫定調査結果を出した。マスク氏は否定したが、Xの「欧州撤退論」まで噴出した。

オーストラリアでは、X上で閲覧できるようになっていた国内の刺殺事件の映像の削除を裁判所が命じたことについて、マスク氏が「検閲」とアルバニージー首相を批判。同様の事例はインドでも起こっている。

イギリスでも、国内の暴動に絡む偽情報をマスク氏が拡散したとして、首相や法相から苦言を呈される事態となっており、「表現の自由」を掲げるマスク氏とXへの信頼は揺らいでいる。

偽情報は主権国家の体制を脅かす

自治体が情報伝達に利用するなど各地で社会インフラ化しているSNSは利便性が高い一方で、偽情報が拡散されることで主権国家の体制を脅かす危険のある諸刃の剣だ。

イノベイティブな事業の世界的展開とともに超国家的な影響力を手中にしたい資産家のマスク氏は、ビッグテック企業代表者のなかでも際立ってラディカルに国家という枠組みと対立している。

このたびのブラジルでのX停止騒動の今後の展開は、法治国家と主にインターネットを媒体とした超国家的企業の関係の行方を考えるうえで目が離せない。

なお、ブラジルでのXのサービス再開については、最高裁が罰金等の命令を取り下げない限りありえないだろうという見解が大多数だ。

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