マスク氏は「エイリアン」

マスク氏のブラジル最高裁への対抗姿勢には、パンデミック中のやりたい放題で世界的に認知度を高めた“トロピカル・トランプ”ことボルソナロ前大統領も集会で賛辞を贈っていた。

モラエス判事はマスク氏から嫌がらせのリプライを受けたのと同じ4月、最高裁のテレビチャンネルで「最高裁、ブラジル国民、そして善良な人々は表現の自由が侵略の自由ではないことを知っています。表現の自由は、憎悪、人種差別、女性蔑視、同性愛嫌悪の蔓延のための自由ではありません。私たちは表現の自由が圧政を擁護する自由ではないことを知っています。それを知らないエイリアンもいるでしょうが、ブラジル司法の勇気と真剣さに気づき、学び始めています」とマスク氏に返した。エイリアンが誰を指すのかは言わずもがなだ。

X停止でブラジル世論は二分している

モラエス氏の命じたXへの制裁はサービス停止と罰金だけに留まらない。罰金を支払わせるためにマスク氏がブラジルで手広く運営する衛星通信スターリンクの銀行口座を差し押さえたうえに、Xユーザーに対してVPN(仮想プライベートネットワーク)で同サービスにアクセスした場合、1日あたり5万レアル(約128万円)の罰金を科すとした。

これらの処罰に対しては、さすがに行き過ぎだとの批判が目立つ。

世界にはすでにXがサービスを停止された国が8カ国ある。ロシア、中国、北朝鮮、イラン、トルクメニスタン、ミャンマー、パキスタンそしてベネズエラだ。いずれも言論統制や独裁のレッテルが貼られた国で、ブラジルもいよいよ“あちら側”の仲間入りと自嘲する論調も少なくない。

今回の「マスク対モラエス」をブラジル市民はどのように見ているのだろうか?

調査会社が約1600人にアンケートした結果では、回答者の49.7%がモラエス判事、43.9%がマスク氏を支持しており、最高裁の判断を正しいと見る市民がやや多いものの、意見が大きく分かれている。また、この度のサービス停止命令を政治目的だとする回答が56.5%、VPN経由でのXアクセスに対する罰金は行き過ぎだとする回答が64.5%となっている。

なお、X停止を受けてブラジルではVPN利用者が1600%増加したと報じられている。