「バーゲンセール」が節約好きを狂わせる

また、いつもは定価3000円の商品Cで満足している人が、Cはセール対象外だと知ると、わざわざもっと高い値引き品に手を出してしまう。いつもより安く買えるのがセールの目的のはずだが、いつもより高く買っている……割引率の錯覚によって。

また、元値が高額品であればあるほど、割引時には最初の価格をアピールしたほうが消費者を惹きつけられる。この商品は値下げ後2万5000円ですと言われるのと、売り出し時は5万円でしたが特別に半額にしますと言われるのでは、受ける印象はずいぶん異なる。同じ金額なのに、これまで見向きもしなかった人が寄ってくるだろう。

もし、そんな高額品を購入するか迷ったら、それが最初の定価だったらどうかと考えてみるのがいい。定価だろうと値引き後だろうと、支払う金額は同じだからだ。うっかり身の丈に合わない買い物をするのを防げるだろう。

写真=iStock.com/Rneaw
※写真はイメージです

1円スタートのオークションの落とし穴

ショーウインドウで最初に見た価格から判断したり、元値より割引される率が大きいものを「お買い得」として選んでしまう心理は、アンカリング効果として知られる。

最初の金額が、見る人の頭にアンカー(いかり)として固定され、それが価格の基準になるからだ。金額そのものよりも、アンカーとなった数字との差によって、高い・安いの印象が決まってしまう。

ところが、ネットオークションではこれと逆のことがよく起きる。例えば、コレクターが欲しがるミニカーがあったとしよう。入札スタートを1円にしている出品者Aと、「3万5000円で即決」という出品者Bが並んでいたら、たいていは1円スタートの方に参加者が集まる。スタート価格が低ければ、そこを基準にするから値段はそんなに上がらないだろうと思うからだ。

しかし、参加者が集まれば集まるほど入札価格はじわじわ上がっていく。最初は数百円程度から入札が始まるが、参加者が増えるほどさらに人が集まり、オークション終了時には結構な金額まで上がってしまう。気づくとあの「3万5000円で即決」価格と、さほど変わらない金額になってしまうこともある。

人間心理とは面白いもの。最初の設定価格が安ければ、「安く買えるチャンスだ」と人が集まる。集まれば集まるほど、「こんなに買いたい人が多いのだから、この商品には価値があるに違いない」と欲しくなり、どんどん価格が釣り上がる。

それとは反対に、最初から一定の金額を提示されると、その金額が妥当なのかなんとも判断がつかない。高めの値付けではないかとの印象を与えてしまい、人が集まりにくいのだ。これもアンカリング効果の逆バージョンといえるだろう。