四川料理ブームから次は「台州料理」へ

ほかに中華系デザートやカフェ専門、ビャンビャン麺などの麺料理専門、麻辣湯マーラータン(辛いスープ料理)専門などの店があり、「中間層」の在日中国人が訪れる。中国と同じく、日本の中国人社会も「中間層」の幅が広いので、それぞれの好みに合わせて、ガチ中華の細分化が進んだのではないか、と筆者は考えている。

中島恵『日本のなかの中国』(日経プレミアシリーズ)

近年、日本に移住してきた富裕層をターゲットにしたのか、新たな潮流として開店したのが、ガチな高級中華料理店だ。

その代表的な存在が台州料理。上海に近く、東シナ海に面した浙江省台州市の料理で、ここ数年、中国全土で急速に知名度を上げている。中国の知人によると、以前は台州という都市自体、知名度が高くなかったが、『新栄記』(シンロンジー)という高級台州料理店が21年に北京でミシュランに選ばれたことがきっかけで有名になった。

同店は95年に創業し、北京や上海の一等地に出店し、じわじわと評判を上げた。マナガツオやイシモチといった魚や蟹などの海鮮料理が有名。同店の成功を機に、他の台州料理店も台州以外の都市に出店するようになった。

一人5万円以上する「高級ガチ中華」も

ほかに寧波料理、潮州料理という、本来、中国八大料理にも名を連ねていなかったマイナーな料理もメジャーになってきた。寧波は台州と同じく浙江省にあり、台州と上海の中間に位置する町。有名なのは年糕ニエンガオと呼ばれる餅で、海鮮などと炒めて食べる。寧波料理で有名になったのは『甬府』(ヨンフー)という高級料理店。『新栄記』と同様、大都市に出店して寧波料理の知名度を全国区にした。

都内で中華料理店を経営する中国人によると「十数年前は四川火鍋が若者の間で人気となり、それが全国区になり、日本など海外にも上陸しました。しかし、コロナ禍により同じ鍋をつつく鍋料理が敬遠され、目新しい料理を求める動きが生まれました。台州料理、寧波料理はそんな新しいトレンドを求めているグルメの間で有名になったのです。

24年3月に東京・赤坂にオープンした『新栄記』は超高級。価格帯は一人5万円以上です。日本人富裕層と中国人富裕層をターゲットにしているのは明らかです」という。

関連記事
なぜ中国人の「爆買い」は消滅したのか…経済をボロボロにした習近平指導部が手を出した"劇薬"の正体
だから中国は尖閣諸島に手を出せない…海上保安庁が「領海警備」「海難救助」以外にやっている知られざる仕事
年収180万円の飲食業界ではもう働けない…タイで年収1億5000万円を稼ぐ「博多ラーメン屋店主」の大きな夢
地元料理より、日本製レトルトのほうがおいしい…「タイ馬鹿日本人が造ったカレー工場」に外国人が驚嘆するワケ
「10個のリンゴを3人で公平に分けるには?」有名な思考クイズをひろゆきが解いたら…答えが斬新すぎた