町中華、高級中華、創作中華につづき…

日本の中華料理は大きく分けて、ラーメンや炒飯、焼き餃子などを提供する「町中華」、ホテルなどに入っている「高級中華」、独自のスタイルを築き上げた日本人コックが開店した「創作中華」などがある。

これらの中には、在日中国人が経営し、コックも中国人という店もあるが、顧客は主に日本人で、味つけも日本風だ。横浜や神戸の中華街にある店も、日本人向けだ。

一方、在日中国人を主なターゲットとしている中華料理店が猛烈な勢いで増えていることも広く知られている。

先駆けとなったのは、15年に東京・池袋にオープンした『海底撈火鍋』(ハイディーラオフォーグオ)だった。1994年、四川省・成都市でスタートした同店は、24年1月現在、中国の240都市で約1300店舗を展開し、世界各国でもチェーン展開(一部はフランチャイズ)している。

現在、日本の飲食店予約サイトで見ると、『海底撈火鍋』の平均単価は5000円前後。幅広い層の中国人が足を運んでいる。火鍋というスタイルのため、安価なランチや定食はないが、平日の昼間に行ってみても、在日中国人の顧客でかなり混んでいる店もあり、驚かされる。

1品500円前後で、中国人学生が通う

同店の成功のあと、次々と中国発のチェーン店が上陸した。18年に高田馬場にオープンした『沙県小吃』(シャーシエンシャオチー)は福建省三明市沙県発のチェーンの軽食店で、ワンタンや和え麺などが人気。価格帯は一品500円前後。主に大学生や日本語学校の留学生などが顧客層だ。同店は、池袋にあるフードコート『沸騰小吃城』にも入っており、一人でも手軽に食べられる。

池袋のフードコート「沸騰小吃城」
筆者撮影
池袋のフードコート「沸騰小吃城」

以降、四川火鍋チェーン『潭鴨血』(タンヤーシュエ)、北京の老舗の羊肉しゃぶしゃぶ店『東来順』(ドンライシュン)など、中国で人気の店が次々と日本にやってきた。

コロナ禍以降、在日中国人が経営する中華料理店も増えた。中国でも一時、「日本に旅行には行けないが、せめて日本料理は食べたい」ということで日本料理ブームが起きたが、日本でも同様に、「ガチな中華を食べたい」と思う人が増加。異業種から参入した経営者が開業したり、他店からコックを引き抜いたりして、本格的な料理を提供するようになった。

これらは「ガチ中華」と総称され、従来、日本にあった広東、上海などではなく、湖南、貴州、西北、武漢などの、どちらかといえば内陸部の料理を提供する店が多い。価格帯はさまざまだが、総じてそれほど高くない。