偉い人ほど仏頂面な理由
新聞や雑誌で取り上げられている社長の写真を見てください。にこやかにほほ笑んでいる人もたまにはいるかもしれませんが、たいていの場合は無表情です。ホームページで大学の先生の写真を見ても、偉い先生になればなるほど、みんな一様に仏頂面をしています。
なぜ、偉い人は笑わないのでしょうか。
その理由は、「愛想よく振るまう必要がないから」と指摘しているのが、米国ミシガン大学のパトリシア・チェンです。愛想よく振るまったり、ペコペコしたりするのは、そんなに偉くない立場の人です。
地位が高くなり、偉くなってくると、誰に対しても愛想よく振るまう必要はなくなるので、顔もどんどん不愛想になっていきます。そのうち、不愛想な顔がしっかりと貼り付いてしまって、写真を撮られるときにもにこやかにほほ笑むことができなくなる、というわけです。
チェンは、自分の仮説を検証してみるため、雑誌『USニューズ&ワールド・レポート』によって評価された、全米トップ20のビジネス・スクールの学部長を調べました。ただし、3つのスクールの学部長は女性だったので、性別による影響を考慮して、残りの17人の学部長の顔写真を実験に使いました。
その17人の学部長の顔写真を37人の判定員に見せて、「どれくらい愛想のよい人だと思いますか?」と尋ねてみました。もちろん、判定員たちは彼らがどこの大学の学部長なのかは知りません。
すると、ランキングの高いビジネス・スクールの学部長になればなるほど、「愛想がない」と判定されることがわかったのです。
ランキングの低いスクールの学部長は、学内ではトップかもしれませんが、世間的に見ればそうでもないことを自覚しているのか、少しは愛想笑いを浮かべて写真に写ります。
ところが、ランキングの高いスクールの学部長はまったくの仏頂面です。社会的に偉くなればなるほど愛想がなくなる、という仮説が一応のところ確かめられたといえるでしょう。
組織の中で出世していったり、社長なら会社の規模が大きくなっていったりすることは、まことに喜ばしいことです。
けれども、自分が偉くなっていくということは、それだけ「イヤな人間の顔」になっていっているのかもしれない、ということは肝に銘じておかなければなりません。
愛想よく振るまう必要がなくなればなくなるほど人は日常生活の中で笑わなくなり、表情が乏しくなっていきます。偉い人になるほど仏頂面になってしまうのです。
意識的に愛想よく振るまうようにしてバランスを取らないと、本当にイヤな顔になってしまいますので、気をつけてください。