ドバイが急成長を遂げた背景には何があるのか。中東に詳しい国際情勢YouTuberの石田和靖氏は「潤ったお金を政府自らが外国企業に投資していく『政府系ファンド』の存在が大きい。その思想はかつて松下幸之助が説いていたものだ」という――。

※本稿は、石田和靖『10年後、僕たち日本は生き残れるか 未来をひらく「13歳からの国際情勢」』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

ドバイの全景
写真=iStock.com/TomasSereda
※写真はイメージです

ドバイ発展の裏にある「国営の投資ファンド」

ドバイが行ったことは、エコノミックフリーゾーンだけではありません。

ドバイには、「ドバイ投資公社」というドバイ政府が持つ政府系ファンドがあるのですが、潤ったお金を政府自らが外国企業に投資していくことで、資産を増やしていくという考え方があります。

フリーゾーンによって生まれたお金を、投資という形で増大させることで、ドバイはさらなる成長を遂げたんです。

中東の政府系ファンドは、主に石油や天然ガスを売ったお金を貯金して運用していくタイプです。対して、貿易の中継地点としてものを販売することで政府が得たお金を貯金して運用していくタイプもあり、その代表例が中国、香港、シンガポールなどです。

次の表は、政府系ファンドの総資産額ランキングですが、トップ10を見てみてください(図表1)。

第1位こそ北海油田の石油ファンドであるノルウェー政府年金基金ですが、第2位以下はずらりと湾岸諸国と中国が並んでいます。

いま、世界でお金を持っている国はアメリカでもイギリスでもなく、中国とアラビア半島にあることが分かると思います。この2つの地域が手を組み始め、エネルギーも豊富に持っている。

こうした観点からも、中東が世界の中心に躍り出ようとしていることが分かるはずです。

「日本の年金基金」と「海外の政府系ファンド」の決定的な違い

ドバイは外国企業をたくさん誘致し、外国人に経済を回してもらう仕組みを築きました。そして、ドバイに滞在する外国人は、エミレーツ航空(航空会社)、エマール・プロパティーズ(不動産)、ジュメイラ・グループ(高級ホテルグループ)といったドバイの政府系ファンドの下に位置する企業にお金を落とします。さらにそのお金を使って、成長が見込める国に投資を行い、利益を増やしていく。

エコノミックフリーゾーンと政府系ファンド、この両輪が回ることで、ドバイは大きく豊かになっていったんですね。

日本にも、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)という年金基金があります。政府が運用しているため、GPIFを政府系ファンドとしてとらえる考え方もありますが、先に挙げた海外の政府系ファンドとは、決定的に違うことがあります。

政府系ファンドは、政府が運用することに加え、あくまでその原資は政府が行っている投資やビジネスで得たお金です。

一方、GPIFの原資は、僕たちのお金。僕たちが稼いだお金から勝手に差し引かれたお金(年金)を運用しているので、政府系ファンドとはまったく違います。

政府系ファンドは、僕たちのお金を勝手に奪うようなことはしないんです。