「企業のやり方」を応用できないか

企業に当てはめたら、これはありえないことです。

会社で言えば、今年度の売り上げが1000万円だった場合、この予算のなかで来年度を考えなければいけません。1000万円から諸経費や税金を差し引いて、100万円の利益が残ったとすると、企業はこの100万円を翌年に繰り越します。翌年、また利益が100万円出たので、合計200万円分のプールがあることになります。企業はこうした剰余を株主に配当したり、先行投資に使ったりするわけです。むやみやたらに使い切るのではなく、理に適った使い方をする。この原理を、社会にも応用できないかと「経営の神様」は考えたわけです。

パンデミックのようなことが起きたり、天災による大きな被害が発生したりすれば、通常よりも予算はかかります。年度によってかかる予算は異なるはずなのに、今年も100万円、来年も100万円、再来年も100万円という具合に予算を決め、さらには使い切るようなシステムにすれば、財政が赤字になってしまうのは当たり前です。松下幸之助が考えたアイデアは、いまでは世界で当たり前のように行われているというのに。

現在、ドバイのあるアラブ首長国連邦(UAE)は、国民全体の約10~20%が自国民、残りの約80~90%が外国人で形成されています。自国民であれば医療費は無料、教育費も無料、所得税、相続税、贈与税といった税金も無税です。唯一、2018年から導入された消費税5%があるくらいです。月給100万円の仕事に就いている人であれば、所得税も社会保障費もないわけですから、そのまま手取り100万円ということになります。

日本人がドバイに学ぶべきこと

ドバイのような経済戦略を描くことができれば、多くの外国人が日本で働くことによって相乗効果も生まれるでしょう。しかし、現在、日本が行おうとしている施策は、人手不足の業界を安い労働力で補うための門戸の拡張です。

2023年7月に、岸田首相はサウジアラビア、UAE、カタールの3カ国を訪問し、帰国後の会見で、UAEの人口は1000万人であるものの、自国民は100万人で900万人の外国人と共生している、外国人を大量に受け入れて国を成り立たせている――といったことを話していましたが、まったく論点がズレていることが分かりますよね。

石田和靖『10年後、僕たち日本は生き残れるか 未来をひらく「13歳からの国際情勢」』(KADOKAWA)
石田和靖『10年後、僕たち日本は生き残れるか 未来をひらく「13歳からの国際情勢」』(KADOKAWA)

外国人を受け入れるならば、きちんと機能するような戦略とアイデアがなければいけません。また、ドバイは治安がとてもよいことでも有名です。これは外国人1人ひとりのIDチェックを徹底しているからでもあります。

ドバイには、どうやって生き残ればいいのか、そのヒントがたくさんある。

ドバイの首長であるシェイク・ムハンマドは、イギリスBBCのインタビューで、「なぜそんなに改革を急ぐのでしょうか?」と尋ねられたことがあります。そのとき彼は、「いまの国民に20年後、30年後に豊かになってもらいたいわけではない。国民にいますぐ豊かになってもらいたいから急ぐんだよ」と答えました。国のリーダーとは、こうあるべきです。

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