シロアリ薬剤が発達障害を引き起こす可能性

一方で、住宅が引き起こす子どもの健康被害についてもお話ししておきます。多くの住宅会社が使用しているシロアリ対策の薬剤は子どもの脳の発達障害を引き起こす可能性があるというのは、知らない方にとっては衝撃的な事実かと思います。

諸外国とは異なり、日本では不思議なことにシロアリ対策(防蟻)に使用されている薬剤は、合成殺虫剤系が主流を占めています。

特に、「ネオニコチノイド」と言われる、EUではミツバチの大量死につながるとされて屋外使用が禁止されている農薬を防蟻剤として使用している住宅会社が多数を占めています(〈家の寿命が「たった30年」なのは先進国で日本だけ…「シロアリだらけの家」を住宅業界が放置する本当の理由〉参照)。

さらに合成殺虫剤は、有機系の薬剤のため、5年程度で自然に分解されて、防蟻の効果がなくなります。そのため、新築時だけでなく、人が住んでいる状態で、5年ごとにこの薬剤を床下の構造材に塗布するということが行われています。

そして、この「ネオニコチノイド」は、自閉症・ADHD(注意欠如・多動症)の発症に関係があるとされているのです。環境脳神経科学情報センターの黒田洋一郎氏、東京都医学総合研究所の木村(黒田)純子氏の論考「自閉症・ADHDなど発達障害増加の原因としての環境化学物質――有機リン系、ネオニコチノイド系農薬の危険性(上)」では、化学物質が子どもの発育に深刻な影響を及ぼすとして警鐘を鳴らしています。

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人体に無害な防蟻処理法はある

信州大学医学部の研究グループによると、2010~2019年度の間に0~6歳の子どものADHDの年間発生率は2.7倍に増加しているそうです。この増加傾向と、合成殺虫剤系の防蟻剤との相関関係は明らかにはされていませんが、とても気になるところです。

防蟻に合成殺虫剤を使わなくても、効果に永続性があり、人体に無害な防蟻処理方法は存在しており、意識の高い工務店はそれを採用しています。家を建てる際には、人体に無害で永続性のある防蟻処理を採用している工務店を選ぶことをお勧めします。

最後に、賢い子どもと住環境の関係について触れたいと思います。2006年に出た『頭のよい子が育つ家』(四十万靖、渡邊朗子 日経BP社)では、中学受験で有名中学校に合格した子どもたちが、どのような自宅や子供部屋で勉強していたのかを徹底的にリサーチしています。