1編成で約25億円

質素ないすが設けられただけの一角だが、観測ドームからの眺めは素晴らしい。かつて東海道・山陽新幹線を走っていた二階建て車両の2階からでもここまで迫力に富んだ光景は見られなかったであろう。

筆者撮影
観測ドームの様子。特等席でも通常は空席で、代わりにビデオカメラが設置されている(2006年8月7日)

けれども、検測の担当者はこの特等席に普段は座っていない。代わりに観測ドームからパンタグラフに向けてカメラが設置され、担当者は映し出された動画を測定台上のモニターで凝視する。

ちなみに、車両の価格はJR東海によると、現在走るドクターイエローのうち、2000(平成12)年に登場したT4編成は7両で約25億円、1両平均約3億6000万円だったという。

営業車両の700系は16両で約40億円だったから1両平均約2億5000万円と1両平均の価格は9000万円ほどドクターイエローのほうが高い。現在営業中の最新モデルのN700Sでも16両で約60億円、1両平均約3億8000万円だ。

筆者撮影
観測ドームからの眺めは時のたつのを忘れるほど素晴らしい(2006年8月7日)

検測は営業用車両で行うことに

ドクターイエローの引退は老朽化が原因だ。

新幹線の車両はおおむね15年を過ぎるとそろそろ交代との声が聞かれる。高速で走る新幹線の車両はJR在来線や私鉄などの車両と比べると走行距離が伸びやすく、しかも高速で走るために車体や機器への負担も大きいからだ。

JR東海が保有するT4編成は2000年製、JR西日本が製造するT5編成は2005(平成17)年製なので引退もやむを得ないと言える。

とはいえ、検測が不要となったのではない。となると新しいドクターイエローを製造すれば事は解決する。ところが、JR東海、JR西日本とも代替となる車両を製造しないという。

JR東海が保有する営業用の車両、具体的にはN700Sに搭載される「営業車検測機能」によって置き換えられると発表された。という次第で、ドクターイエローが姿を消したら、黄色い新幹線の車両は二度と見られなくなる可能性が濃厚だ。

現在、ドクターイエローで検測している項目の数は合わせて70項目である。内訳は電力設備が13項目、信号装置が7項目、無線装置が10項目、軌道が40項目だ。実は検測項目数はT4編成が登場した2000年当時は信号装置や無線装置がアナログからデジタルへと切り替えられる過渡期であったため双方の装置を検測するためにいまより多く、120項目ほどあったという。