車内にある意外な設備

大半の空間には検測用の機器が所狭しと搭載されている。

検測用の担当者が乗り込んでいるのは主に1号車と4号車との2両だ。これら2両にはいくつものモニターが並べられたコンソールと呼ばれる測定台が設置された。

1号車には電力、信号、通信の各設備の担当者が、4号車には軌道部門の担当者がそれぞれ陣取り、映像やデータで表示される検測結果を凝視している。

車内には数多くの検測用の機器が並べられている(2006年8月7日)
筆者撮影
車内には数多くの検測用の機器が並べられている(2006年8月7日)

6号車には会社の応接室のようなミーティングルームがあり、新幹線に異常が生じたときの復旧に用いる資材を置くためのスペースも設けられた。

7号車には添乗室があり、700系の普通車と同様に通路をはさんで3人がけと2人がけの腰掛が10列並んでいる。筆者は2006(平成18)年8月に取材でドクターイエローに東京駅から新大阪駅まで乗車した際、この添乗室に案内された。

ドクターイエローは営業には用いられない車両ではあるが、空調装置は搭載されているから車内の温度は一定に保たれているし、トイレや洗面所も3号車と5号車とに用意されている。

当たり前だが先頭車には運転室があり、普段は営業列車を担当する運転士が業務としてドクターイエローの運転を担う。車掌も乗務しており、営業列車と同じように駅に到着する際にはホームを監視し、出発の際には安全確認を行って運転士に出発の合図を出す。

1号車の測定台で通信装置を検測しているところ(2006年8月7日)
筆者撮影
1号車の測定台で通信装置を検測しているところ(2006年8月7日)

観測ドームの役割

車内からいったん外に出て、2号車と6号車の屋根上を見ると、上空の架線と接触しているパンタグラフが目に入る。営業用の車両と異なるのは各車両に2基ずつ搭載されている点だ。

2号車のパンタグラフは博多駅寄りが測定用、東京駅寄りが電力採り入れ用、6号車は反対に博多駅寄りが電力採り入れ用、東京駅寄りが測定用となっている。

パンタグラフの上げ方は、ドクターイエローが博多駅方面に走る場合、2号車は測定用、6号車は電力採り入れ用をそれぞれ上げ、東京駅方面に走る場合、2号車は電力採り入れ用、6号車は測定用をそれぞれ上げる決まりだ。

要するにドクターイエローのパンタグラフは、進行方向前側は測定用、後ろ側は電力を採り入れ用をそれぞれ使うと考えるとよい。

再び車内に戻ろう。何から何まで営業用の車両と異なるドクターイエローの車内でひときわ目立つ存在が3号車と5号車とに設けられた観測ドームだ。

ドームという名称どおり、屋根から突き出した一角があり、窓から屋根上の光景を展望できる。ドームの窓は3号車のものは2号車を、5号車のものは6号車をそれぞれ向いて取り付けられた。何を見ているのかは、少し前の段落に伏線がある。観測ドームはパンタグラフの作動状況を見るためのものだ。