岡田将生演じる星航一のモデルは三淵乾太郎そのものではない⁉

つまり、「司法の歴史」というのはこれまで誰も触らなかった、裏返せば誰もやっていないからこそ自由にできるもので、そこの品質管理はこちらがやるから、吉田さんはどんどん自由にやってほしいというのが、私の願いだったんです。

そうすることで、いろいろな差別の問題や、日本の司法制度の課題などが浮かび上がってくればいいなという思いがありました。加えて、私は社会部で長く憲法取材班も担当していましたので、憲法についても正面から扱ってほしいと願っていました。

さて、ドラマでは主人公・寅子(伊藤沙莉)の再婚という縦軸の展開が話題になりました。寅子の新たなパートナーとなった航一さん(岡田将生)ですが、史実の再婚相手の三淵乾太郎さんについて「モデル」という言い方はしていません。

それは実際とは異なることが多々あるからです。航一さんの場合、三淵嘉子さんの再婚相手の三淵乾太郎さんとはまず年齢設定が違っていて、実際より少し若く設定されています。史実では嘉子さんは再婚時に41歳、乾太郎さんは50歳でした。また、異動のタイミングも違います。

©三淵邸・甘柑荘/アマナイメージズ
三淵嘉子、乾太郎夫妻(1957年9月撮影)

ドラマでは事実婚だが、三淵嘉子は再婚して姓を再び変えた

ただ、三淵乾太郎さんを含め、参考にさせていただいている人物に関しては、可能な限りご遺族にあいさつをし、事情も話して、ドラマでは史実と違う取り上げ方になりますということをお伝えしています。最初から細かい設定まで決めているわけではないので、物語の進行に応じて、そのつど、説明をしながら進めています。

特に第21週では、寅子たちが互いの姓を変えず「夫婦のようなもの」になることを決め、事実婚を選択しています。このアレンジには私もびっくりしましたが、吉田さんの希望を尊重しようということで、そこから両家、嘉子さんのご遺族と乾太郎さんのご遺族にそれぞれ説明し、ご理解をいただきました。特に史実と違う話になるときは、法的な話とは別に、ご遺族の理解・納得をいただくのは非常に大切なことだと思っています。

ちなみに、参考にした乾太郎さんと航一さんの人物像は、私が乾太郎さんを知る親族などを取材したかぎり、重なる部分も多いですね。簡単に言うと、冷静で、じゃっかん近寄りがたくて、超イケメン。写真を見ても細身でシュッとしていらっしゃるでしょう。「イギリス風紳士」といった回想も残っています。一方で、ちょっと気難しいところもあったという証言もありました。