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リーダーであれば団体規律の重みを理解せよ

今回の出来事は非常に残念です。「未成年者に対しては夢を直ちに奪うのではなく適切な教育・指導が必要」とする意見にも心情的には賛同します。

ただ「宮田選手は2カ月後には20歳になり飲酒も喫煙もできるのだから、ルールをそこまで厳格に適用しなくてもいいのではないか」という温情論には、完全には同調できません。以下の3つに論点を絞り、見ていきましょう。

①未成年者である宮田選手の「飲酒・喫煙」は処罰の対象となるのか
②「自宅などでの喫煙」は、代表辞退に相当する行為か
③「代表合宿での飲酒」はどうか

まず①の未成年者の飲酒・喫煙問題ですが、これは処罰の対象に「ならない」が正解です。「未成年者飲酒(喫煙)禁止法」は、20歳以下の若者の飲酒・喫煙を禁じています。しかしこの法律はあくまでも未成年者の健康を守るためのものであり、飲酒・喫煙の事実が認められたとしても罰せられるのは本人ではなく、未成年者に酒やたばこを勧めた周囲の大人です。

つい誤解してしまうのは、生徒の飲酒・喫煙は悪いことだから停学などの罰を与えるという感覚が学校などにあるからですが、立法趣旨からすれば罰を受ける対象はむしろ教師や親など大人のほうなんです。

こうしたことを考えれば、宮田選手の飲酒・喫煙が事実だったとしても、それが自宅や練習場所以外のプライベート空間のことだけなら「厳重注意」で済むことでしょう。実際、5月のパリ五輪予選の上海大会でも、スケートボードの未成年4選手の飲酒が取りざたされましたが、名前も公表されず、口頭での注意止まりでした。では彼らと宮田選手の違いは何か。それは「飲酒した場面・場所」の違いです。

スケボーの4人は18歳以上の飲酒が合法とされる上海で、飲酒意図がなかったにもかかわらず、スポンサーやスタッフに勧められて少量飲んでしまったとのこと。一方、宮田選手は自らの意思で、日本体操協会によって禁じられている場面・場所で飲酒に及んだとされています。これは些細なようで大きな違いです。

報道によると、宮田選手の喫煙場所は単に「都内」ということなので、これだけなら厳重注意で済む話です。が、飲酒した場所は東京都北区にある味の素ナショナルトレーニングセンター(トレセン)内の居室でした。つまり宮田選手は①②はセーフだったが、③「代表合宿における飲酒は代表辞退になるか」の点で、アウトだったのです。

写真=iStock.com/Ryosei Watanabe
※写真はイメージです

トレセンは日本のトップアスリートたちの養成施設です。文部科学省の告示を受けて約370億円かけて設置され、日本オリンピック委員会(JOC)が運営を担当しています。

五輪選手ともなれば莫大な費用と人的投資を受ける身です。スポーツを志す者なら誰もが羨む最高の設備・スタッフ・プログラムを享受できる場。そんな選ばれし選手のみが切磋琢磨し、体調コントロールをする場で「飲酒・喫煙」が禁止されるのは当然です。それは周囲のモチベーションに悪影響を与えるからです。有名大学の運動部レベルでも、活動の場で飲酒・喫煙を公に認めているところなど聞いたことがありません。

公益財団法人日本体操協会の「日本代表選手・役員の行動規範」には、「日本代表チームとしての活動の場所においては、20歳以上であっても飲酒は禁止とする」と明記されています。

そう、仮に宮田選手が20歳だったとしても「代表チームとしての活動場所での飲酒」はアウト。つまり「あと2カ月で成人」云々は関係ないんです。